DADDY FACE SS 『雪人の悩み<改>(2)』
by Sin



 あの後、しばらくの間、幸貴とのスキンシップを楽しんでいた舞だったが、結局、雪人の事を放っておくわけにもいかなかったので、取り敢えずドーラを尋ねていた。
「ふぅ・・・久しぶりに幸貴さんと一緒にいられたのになぁ・・・どうして2人きりでいる時に限って、いつも邪魔が入るのかしら・・・」
 そう言って溜息をつく舞。
 だが、幸貴との会話が脳裏に浮かんで、頬を赤らめる。
『幸貴さんのお役に立てるなら・・私・・』
『舞ちゃん・・・ありがとう・・・』
「あ、あはっ・・私、あんな事言っちゃって・・・恥ずかし・・・」

 舞は思う。
 いつもそうだ。
 幸貴さんの前に立つと、つい浮かれてしまう。
 胸の奥が熱くなって、普段なら絶対に言わないような事でも、つい、言ってしまう。
 そして後々になって思い返すと、恥ずかしくなる・・
 でも、それは、やっぱり私が幸貴さんを・・・幸貴さんだけを・・・

 と、その時、ゆっくりとドアが開いた。

「なに・・かナ?」
 姿を見せたドーラの様子は、わざわざ心の声を聞かなくてもすぐに解った。
「(うわぁ・・ドーラさん、ほんとに機嫌悪そう・・・)」
 思わず一歩退いてしまった舞だったが、気を取り直して話しかける。
「えっと・・ちょっと話したくて来たんですけど・・お邪魔・・ですか?」
「そう・・いいわ、入っテ」

 部屋の中に通された舞は、進められるままソファーに腰掛けた。
 どうやって、話を切り出したらいいか迷っていた舞だったが、やがてドーラの方から口火を切った。

「それで・・・なにかしラ?」
 無言の圧迫感に思わずひるみそうになった舞。だが、離さないことには何も始まらないと思い返し、一度、大きく深呼吸をして、話し始めた。
「あのね・・・今日、雪人さんにあったんだけど・・」

 一言・・たった一言言った瞬間だった。
 その一瞬で、舞はまるで心臓を鷲掴みにされたように思って息を呑む。『雪人』の名前を出した途端に、ドーラからとてつもない殺気が吹き付けてきたからだ。

「(こ、怖い・・ドーラさん・・凄く怒ってる・・・)」
 逃げ出したくなった舞だったが、幸貴の頼み事とあっては逃げるわけにもいかず、何とか堪えた。
「あ、あのね、なんだか、雪人さん凄く落ち込んでて・・・」
「落ち込んで・・ル?」
 戸惑うようにドーラが言ったその時、先程までの殺気が幾分和らいだ。
「うん・・それで・・ね、幸貴さんの所に、相談に来たの・・」
「相談? なんノ?」
「その・・・女の人の喜ばせ方・・って・・」
「はァ?」
「雪人さん、ドーラさんを怒らせてしまった理由が解らないから、何か喜ぶ事をして仲直りしたいみたいで・・」
「解らないっテ!? ・・・本気で解ってないノ?」
「そう・・みたいです・・」
 身を乗り出して聞いてくるドーラの迫力に口籠もりながらも舞がそう答えると、ドーラは苛立たしそうにしていたが、やがて大きな溜息をついてソファーに座り込んだ。

 と、その時、舞はドーラの心の声を聞いた。
「(まったく・・ほんとに鈍いんだかラ・・)」
 途端にドーラの怒りがスッと消えていく。
「(あ、心の声から・・怒りが消えた・・・)」
 ようやく安心した舞は、事の真相を確かめる為に話を進めた。

「それで・・何があったんですか?」
「うン・・・この前、私が誕生日だった事は・・知ってるよネ?」
「はい」
「それデ・・ちょうどその日に雪人さんが食事に誘ってくれたかラ・・てっきり誕生日祝いをしてくれると思ったラ・・・」
それからしばらくの間、舞はドーラの話を聞いていたが、やがて・・・

「ひっど〜い!! それじゃあドーラさんが怒るのも当然です! 私、雪人さんに文句言ってきますっ!!」
「アッ、舞・・・」
呼び止めようとするドーラの声を背に、舞は駆け出していった。

その様子にしばらくの間呆然としていたドーラだったが、やがて溜息をつくと座り込む。
「私達も・・いつかは舞達みたいに・・なれるの・・かナ?」
そう言って天井を見上げるドーラの表情に、怒りの色は全く無くなっていた。











 
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