DADDY FACE SS 『雪人の悩み<改>(3)』
by Sin
「兄貴の奴・・一体何をやったんだ・・・」
そう言うと幸貴は時計を見た。
舞が出て行ってからすでに2時間。
「・・遅いな・・舞ちゃん・・」
幸貴が心配げにドアを見つめた、その時・・
「幸貴さんっ!!」
激しくドアが開かれ、部屋に舞が飛び込んできた。
あまりの勢いに、椅子にもたれかかっていた幸貴は驚きのあまりひっくり返ってしまう。
「い・・っっ・・・ま、舞ちゃん、どうしたんだ?」
打ちつけた頭を抱えながら幸貴が起きあがるが、舞はそれどころではない様子で、辺りを見回していた。
− いつもなら・・すぐに心配してくれるのに・・・
「なにかあったのか?」
不思議に思った幸貴がそう言うと、舞は凄まじいまでの勢いで詰め寄った。
「なにかじゃありませんっ!! そんな事より、雪人さんはどこですっ!!」
舞のその剣幕に幸貴は思わず後ずさる。
だが、舞はまるで逃がすまいとするかのように幸貴の襟首を掴んで引き寄せた。
あまりの迫力に幸貴の顔が青ざめる。
「あ、兄貴なら・・30分くらい前に・・出てったけど・・・」
「なんで引き留めておかないんですかっ!! 雪人さんの事で私が聞きに行ってるっていうのに!!」
グイグイと舞は襟首を締めつけてくる。
「ご、ごめん・・・ま、舞ちゃん・・・」
激しく締めつけられて、幸貴の意識が遠くなる。
「私がっ! あんなにっ! 怖い思いしてっ! 聞いてきたって言うのにっ!!」
半分泣きながら一言区切るたびに、首がだんだん絞まっていく。
それと共に、幸貴の顔色は青からだんだん白へ・・・・
「ま・・マジで・・・死ぬ・・って・・・」
もはやこれまでと思われたその時、思わぬ助けが入った。
「あら、どうしたの、舞ちゃん?」
そう声をかけてきたのは、幸貴の姉、美沙だった。
− た、助かった・・・・
そう思ったのも束の間、今度は美沙に踏みつけられる。
「うげっ!?」
潰れた蛙のような声を出して、幸貴は床に這いつくばらされた。
「あんた、いつの間に女の子を泣かすような奴になったわけ〜?」
「ち、ちがぅ・・ぐえっ!」
否定しようとするが、再び踏みつけられる。
「なにが『ぐえ』ですかぁ! 私すっごく怖かったのにぃ・・幸貴さんのばかばかばかぁっ!」
そう言ってぽかぽかと叩き始める舞。
やがて、その辺にあるクッションなども次々に投げ始める。
その全てを美沙は幸貴を踏みつけたまま難なくかわしていたが、足下の幸貴はぐりぐりと踏みつけられ、色々な物をぶつけられていた。
それがしばらく続き、美沙に踏みつけられ舞に乱打されていく内に、幸貴の中に怒りが充満していく。
「あ、兄貴の所為で・・・俺までが・・・ぐえっ!」
そう言った途端、美沙の踏みつけが弱まった。
「今、なんて言ったのかな?」
にこやかに聞いてくる美沙の迫力に脅えたのか、舞の手も止まる。
「くそっ! 雪人兄貴がドーラさん怒らせたから、こんな事になったんだっ!」
頭の上につもったクッションの山を払いのけながら幸貴はそう答えた。
その言葉に舞もようやく怒りの元を思い出したのか、再び幸貴に詰め寄った。
「それで、雪人さんはどこなんです?」
「だ、だから出て行ったから解らないって・・・」
幸貴がそう言うと、再び舞の表情が険しくなる。
「幸貴さん・・探してきてくれますよね? ・・・ね?」
にこやかに笑ってはいるが、眼は全く笑っていない。
「は、はいぃっ! さ、探してきますっ!!」
脅えて駆け出そうとした幸貴の背中を美沙が蹴り飛ばした。
「どわぁぁぁぁっ!?」
派手な音を立てて転がる幸貴を再び美沙が踏みつける。
「で、一体何があった訳? ちゃんと話しなさいよ」
そう言う美沙の言葉にようやく舞は落ち着いて、これまでの事を話し始めた。
やがて舞の話が終わると、美沙は無言で立ち上がった。そしておもむろに携帯を取り出す。
「あ、冴葉? 雪人の居場所、すぐに解る?」
『解りますが・・どうかしましたか、ボス?』
「あのね〜」
そう言って事情を説明する美沙。
説明が進むにつれ、だんだん電話の向こうで冴葉の声に怒りが混じっていく。
「・・あのバカ・・ちょっと懲らしめないといけないみたいだから・・ね」
『・・・解り次第、そちらに連絡します。一応、娘にも見かけたら連絡するように行っておきますね』
「お願いね〜。ああ、ついでに草薙の照準も雪人にあわせといてね〜」
『ご心配なく。すでに手配済みです』
「あんがと。じゃああとよろしく〜」
そう言って電話を切ると、美沙は美月と美緒にも電話をつないだ。
そして事情を説明すると・・・
『・・ドーラを泣かすなんて・・絶対に許さない・・・ちょうど銃の調整も終わった事だし・・』
電話の向こうから、美月の声と共に銃声が聞こえた。
『一発では終わらせないわよ・・兄さん・・・』
そして美緒はと言うと・・・
『見つけたら、即、天地竜杞憂ね〜。間違いなくやっとく〜』
そう言うなり電話が切れた。
「あとは、冴葉と沙慧ちゃんからの連絡待ちね・・・幸貴、あんたは動かなくて良いから舞ちゃんと一緒にいなさい」
「え?」
「あんたが一緒にいて、中和されると面倒だから。雪人の事だし、あんたの事盾にするかもね〜」
その言葉に、幸貴の顔が真っ青になった。誰も好き好んで、この姉達の責め苦を受けたいとは思わない・・・
「わ、解ったっ! 俺、ここにいるからっ!!」
「じゃ、あとは私達に任せときなさい。ね、舞ちゃん」
「は、はいっ、お願いしますっ!」
その舞の言葉に美沙は微笑みかけると、部屋を出て行った。
そして幸貴は・・・
「・・・兄貴・・最悪の地雷・・踏んだみたいだな・・」
そう言って部屋の隅で震えていた・・・
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