DADDY FACE SS 『雪人の悩み<改>(1)』
by Sin



 日差しがブラインド越しに優しく降り注いでくる部屋の中、幸貴と舞はいつものように2人の時間を楽しんでいた。
「今日も良い天気ですね。雲一つ無いくらい・・なにか良いことあるかなぁ・・」
「俺はこうして舞ちゃんと一緒にいられるだけで、十分だけどね」
「幸貴さん・・・嬉しい・・私も・・・」
 瞳を潤ませて微笑んだ舞は、そう言って幸貴に寄り添った。
 その時・・・

「・・ん? 誰か来たみたいだな・・」
「えっ?」
 不思議そうに見つめてくる舞の頬にそっと触れて微笑みかけると、幸貴は玄関へと向かった。
「誰かな?」
 そう言って扉を開けると、そこにはすっかり落ち込んだ様子の雪人の姿があった。
「あれ、兄貴。いきなりどうしたんだ?」
「幸貴・・・」
 あまりにもいつもと違う様子に戸惑う幸貴。
「ま、まあ、とりあえず、入れよ」
「ああ・・」
 幸貴に促されるまま雪人は部屋に入った。

「幸貴さん、誰だったんですか? あっ・・雪人さん」
「や、やあ・・しばらく・・」
「こんにちは。お茶、入れますね」
「あ、ああ、ありがとう・・」
「今日は兄貴の手伝いは勘弁してくれよ。この間から、姉貴達から散々振り回されて、久しぶりの舞ちゃんとの時間なんだからな」
「今日は・・・違うんだ・・・」
「今日はって・・・」
「・・・・幸貴!」
 そう言うと雪人はいきなり戸惑う幸貴の肩をがっしりと掴んだ。
「お、おい、兄貴!?」
「女って・・・」
「へっ?」
「女って、どうやったら・・・喜ぶんだ?」
「は、はぁっ!? あ、兄貴、一体何を・・・頭でも打ったのか!?」
 思わず我が耳を疑った幸貴。
 それと同時に舞もあまりの事に運んできたお茶をひっくり返してしまう。
 派手な音がしてコップが砕け散り、熱湯が飛び散った。
「きゃっ!」
「舞ちゃんっ!」
 慌てて駆け寄った幸貴だったが、どうやら無事の様子だった。
「怪我はない?」
「は、はい。ごめんなさい、コップ壊してしまって」
「いいって、それくらい。コップなんてまた買えば良いんだし。それよりも舞ちゃんに怪我が無くてよかった」
「幸貴さん・・」
「舞ちゃん・・」
 じっと見つめ合う二人。だが、存在を忘れられていた雪人の言葉で我に返った。
「幸貴〜っ、俺が悩んでる時にお前はぁ〜っ」
「あ、悪い悪い、で、なんだっけ?」
 ジト目で睨みつける雪人に慌てて幸貴はそう言った。

「お前・・・あれだけ驚いて・・・聞いてなかったのか・・・?」
「う・・えぇと・・」
「女の人の喜ばせ方、でしょ。幸貴さん」
 クスッと笑って、舞が教えると、ようやく思い出した幸貴は、
「あ、ああ、そうだった。あまりに意外な事聞いたから、頭からふっとんじまってた」
 そう言って笑った。

「で、どうなんだ?」
「それ以前に、なんでいきなりそんな事聞くんだよ、兄貴?」
「少なくても雪人さんのキャラじゃないですよね」
 にこやかにそう言った舞に雪人はため息をつくと・・
「なにげにきつい事言うね・・・」
「あ、ごめんなさい・・」
「気にしなくて良いって」
「幸貴、言うにしても、それは俺の台詞だ」
 ジト目でそう言う雪人の言葉を無視して幸貴が、
「で?」
 と聞くと、途端に雪人は口ごもったが、やがて・・・
「それはその・・ちょっとドーラと喧嘩して・・」
「へぇ・・あのドーラさんが兄貴に怒るなんて珍しい事もあるもんだな」
「何をして怒らせたんですか?」
「い、いや、それが・・よく解らなくて・・・」
 そう言うと雪人はまた口ごもる。
「おいおい、いくら俺でも、何が原因か解らなかったら、手の打ちようがないって」
「あ、だから喜ばせる方法が知りたいって事ですか? 何かして喜んで貰って仲直りしようと思って」
 舞がそう言うと、雪人は頭を掻きながら頷いた。


「それでも、やっぱり原因が解らないと・・・」
「・・・兄貴、ドーラさんが怒った時って、何をしてたんだ?」
 幸貴がそう言うと、雪人はしばらく考えた後、ポツリと答えた。
「いつもと・・変わらないと思うんだが・・・」
 その答えに幸貴はため息をつくと、
「あのさ、いつもと同じならドーラさん、怒ったりしないだろ。どんな状況で、何をしてて怒られたのか、思い出さないとどうしようもないぞ、兄貴」
「う・・・」
 結局それから30分近くも雪人は考え込んでいたが、結局答えは出なかった。

「ったく、世話のかかる兄貴だな・・・舞ちゃん、悪いけどドーラさんにそれとなく話を聞いてみてくれないか?」
「えっ・・私が?」
「出来れば、なんで怒ってるのか、『聴いて』きて欲しいんだ」
「あっ・・はい。それじゃあ、ちょっと行ってきますね」
「ごめん、折角の時間だって言うのに」
「気にしないで下さい。それに・・幸貴さんのお役に立てるなら・・私・・」
「舞ちゃん・・・ありがとう・・・」
 頬を赤らめて言った舞をじっと見つめて幸貴がそう答えると、二人の間には再び誰も入っていけないような空間が広がった。

 当然その様子を雪人がジト目で見つめていた事は言うまでもない。









 
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