DADDY FACE SS 『雪人の悩み<改>(8)』
by Sin
美沙にあの場から追い立てられた雪人は、痛む身体を引きずりながら人気のない道を歩いていた。
「っててて・・・くそ〜、こんなに血だらけじゃなけりゃ、こんなトコ歩く必要なかったんだけどなぁ・・」
ぶつぶつ愚痴を言いながらも、雪人は目的を果たすべく、ドーラの家へと向かう。
だが、天地竜杞憂の余波で傷ついた身体で動き回るのはかなり厳しい。
先程から、何度も壁にもたれかかって休みながら少しずつ足を進めていた。
「参ったな・・ひょっとしたら、骨の2、3本・・・いや、もっと・・折れてるかも・・」
刺す様な痛みが身体のあちこちからして、雪人は顔をしかめる。
さっきまでよりも段々痛みが酷くなっている様だ。
「父さんや虎雄さんでもあれだけダメージを受けたんだから・・いくらその余波だけって言っても・・今の俺じゃ・・きついってことか・・」
その瞬間、いきなり目の前が暗くなって、雪人は壁にもたれかかったままズルズルと座り込む。
「やべ・・血、流しすぎた・・」
なんとか立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。
「ったく・・洒落になんね〜状態になってきたな・・」
段々気が遠くなっていく。
「マジで・・やばいか・・俺・・」
『・・・・・・っ!!』
薄れていく意識の中で、雪人は誰かの声を聞いた様な気がした・・
どれくらいの時間が流れたのだろう・・
暖かい物に包まれている様な気がして、ふと目を開けると、そこは見覚えのない部屋。
「俺は・・・助かったのか・・?」
どうやら誰かに運ばれたらしく、雪人は薄水色のベッドに寝かされていた。
その温もりを感じながら、辺りを見回す。
「ここ・・は?」
と、その時、ベッドの脇から誰かが身を起こした。
「雪人さンっ!! 気がついたノ!?」
そう言って抱きついてくるドーラに驚いた様に目を見張る雪人。
「ドーラ・・ここ・・お前の・・?」
「だって・・雪人さん酷い怪我してたカラ・・」
涙目で見つめてくるドーラの頬に、そっと雪人は手を触れる。
「え・・・? ゆ、雪人・・さン?」
「・・わりい・・ドーラ。マジで助かった」
雪人にそう言われて、ドーラは顔を真っ赤に染めた。
「う、ううン・・そんなコト・・」
そう言って恥ずかしそうに目を逸らす。
「そ、それデ・・なにが・・あったノ?」
慌てて話を切り替えるドーラ。
だが、雪人の返事に、顔色を変えた。
「それがさ・・この前、俺、ドーラのこと酷く待たせて・・嫌な思いさせちまっただろ・・」
「あ・・」
そう言われて、自分がなんで怒っていたのか思い出したドーラ。
だが、今の雪人を見ていると、もう怒りも湧いてこない。
「その事で、姉貴とか美月とか・・それに美緒までがキレちまってさ・・」
「それデ・・・その・・怪我?」
「父さんと、虎雄さんのお陰で、この程度で済んだけど・・実際かなりやばかったな・・」
「そんナ・・じゃあ・・私ノ・・所為・・で・・」
そう言って目を伏せたドーラだったが、いきなり雪人に手を握られて、ハッと顔を上げた。
「ドーラの所為じゃないって。あの事だって、俺が悪いんだからさ」
「で、でモ・・」
「それと・・」
「えっ?」
「俺・・他人の誕生日ってどうにも覚えるの苦手でさ・・いまだに家族の誕生日も間違えるくらいで・・」
「そ、そうなノ!?」
「だから・・あの時も、ドーラの誕生日だって事・・気付かなくて・・」
「じゃ、じゃあ、なんであの時ハ・・?」
「・・前から約束してただろ? そのうち一緒に飯でもって」
「それじゃ・・雪人さんハ・・約束守ってくれただけ・・デ・・」
握られた手に頬を赤らめながらも、驚きを隠せないドーラ。
「それなのに・・私ハ・・」
呟いて、目を伏せる。自分の勘違いが原因で・・そう思うと苦しくて、ドーラは唇を噛んだ。
「それと・・」
「えっ?」
「あの時・・俺、あの子を家まで連れて行った後・・他に3人、同じようなのと会っちまってさ・・その・・」
「それじゃ・・」
「わりい・・やっぱりほっとけなくて、結局全員家まで送ったんだ。ドーラのことは・・気になってたんだけど・・さ・・」
そう言って謝る雪人に、ドーラはしばらくうつむいていたが、やがて・・笑い出した。
「ど、ドーラ?」
「・・雪人さン・・らしいネ・・」
涙目で笑いながら、そう言ったドーラは、いきなり雪人をギュッと抱きしめ・・
「美沙さん達にハ、まだしばらく雪人さンのコト内緒にしておくネ」
微笑みながらそう言って、いきなり雪人の頬に唇を触れさせた。
「ど、ドーラ!?」
慌てる雪人の様子に、顔を赤らめながら笑って、
「・・治療代。ゆっくり休んでネ、雪人さン」
そう言うと、ドーラはさらに真っ赤になって部屋を出て行った。
静まりかえった部屋の中で、雪人は照れくさそうにポリポリと頬を掻いて・・
「治療代って・・・普通、俺の方が払うもんじゃねえのか・・?」
そう言いながら、さっきのドーラの真っ赤になった顔を思い出し、笑った。
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