DADDY FACE SS 『雪人の悩み<改>(7)』
by Sin
美緒の謝罪からしばらくして・・・
シールドに守られていた樫緒、美沙、美花。それにこの惨状の張本人、美緒は全くの無傷だったが、天地竜杞憂をなんとかやり過ごしたとはいえ、鷲士、虎雄、雪人の傷は、決して浅いものではなかった。
最近、以前よりもはるかに実力を増している鷲士は歩き回る程度なら問題なかったが、虎雄はあの直後、立っていることが出来ずに倒れ込み、今は美沙に膝枕をして貰っている状態だ。
「虎雄、本当に大丈夫?」
心配気に問いかける美沙の頭をポンポンと優しく撫でる虎雄。
だが、その表情とは裏腹に、全身傷だらけだ。
「酷い怪我・・」
「そりゃあ、美緒の天地竜杞憂をまともに受け止めたんだからなぁ・・生きてるだけでもマシだって」
そう言ってその場にへたり込む雪人。
こちらの傷もかなり酷い。虎雄よりはマシとは言え、立っていることも辛そうだ。
「あんたは自業自得でしょ。なのに・・あんたの所為で虎雄まで・・大体、なんであんたの方が虎雄より傷が浅いのよ!」
「う・・それは・・」
思わず口籠もる雪人。
話そうとはするが、睨み付けてくる美沙の視線に言葉を失う。
「僕と虎雄君の左竜閃刀で、天地竜杞憂の力の流れそのものを断ち切ったから、雪人君にはその後の余波が当たっただけだからね」
「と、父さん・・っ」
慌てて止める雪人だが、すぐに美沙の視線に気付いて、身をすくめた。
「やっぱりあんたの所為じゃないの・・虎雄にもしものことがあったらどうするつもりだったのよ!」
「あ・・ううぅ・・」
更に小さくなる雪人。
「今の虎雄君なら大丈夫だと思って任せたんだけど・・・ごめん。美緒ちゃんの力があんなに上がってるとは思わなかったから、虎雄君にそんなに怪我をさせてしまって・・」
「い、いや、俺が・・修行不足・・ッ!」
慌てて起きあがろうとした虎雄は、傷の痛みに再び倒れ込んだ。
「まだ動いたら駄目! 無理しないで・・虎雄」
「う・・くっ・・情けねえな・・このくらいで・・」
その虎雄の言葉に、美沙のおでこにでっかい汗が浮かぶ。
「て、天地竜杞憂を相手にして、このくらいで済んだだけでも凄いと思うけど・・」
「・・・そう言う意味じゃ・・」
「えっ?」
「・・なんでもない・・少し・・寝る・・」
そう言ったきり、虎雄は口を噤んで美沙の膝を枕に目を閉じた。
「うん・・お疲れさま・・虎雄・・」
「美沙ちゃん、虎雄くんのこと頼むよ」
「えっ、鷲士くんは?」
「さすがに僕も今のはきつかったからね・・先に樫緒くん達と帰ってるよ。美沙ちゃんはもうしばらく虎雄くんと・・ね」
そう言って微笑む鷲士の意図に気付いた美沙は顔を赤らめるが、やがて照れくさそうに微笑むと、頷いた。
「樫緒くん、疲れてる所悪いけど・・」
「わかりました。父さん、美花、美緒、僕の側に」
「はーい、樫緒兄さま〜」
「う、うん」
嬉しそうに駆け寄る美花と、先ほどのことで怒られるかもとびくびくしている美緒。
「では行きます」
「あ、兄貴! 俺は!?」
雪人は慌てて立ち上がろうとするが、足がもつれて再び倒れ込む。
「あなたにはまだやるべき事が残っているでしょう。それを済ませてから自分で帰ってきなさい」
「そ、そんなぁ・・今だって立つことも出来ないってのに・・」
泣き言を言う雪人だったが、樫緒に睨み付けられて黙り込んだ。
「自分のやったことの責任くらい取ってから帰ってきなさい。それまでは家に入れませんよ」
「あ、兄貴!」
慌てて追いすがろうとする雪人の目の前で、樫緒達の姿は一瞬で消えた。
「そ、そりゃないぜ・・兄貴・・」
そのままへたり込む雪人。だが、次の瞬間、殺気を感じで飛び退くと、先程までへたり込んでいた場所に二つの弾丸がめり込んだ。
「な、なんだ!?」
慌ててその軌道の先を見ると・・・
そこにはルガーを構えた美沙の姿が・・
「あ、姉貴!?」
「・・・さっさと行きなさいよ・・」
「だ、だけど今は動けなくて・・」
「虎雄にこんな怪我させといて、ただで済む・・なーんて思ってるわけ無いわよね?」
「う・・っ・・」
「とりあえず、今は虎雄をゆっくり休ませてあげたいから、これ以上はしないけど・・」
そう言いながら、美沙は腕のコンソールを開き、草薙にアクセスを始めた。
「もし、まだぐずぐずしてるなんて言うつもりなら・・」
その瞬間、雪人の目の前に真っ赤なレーザーが降り注ぎ、慌てて飛び退く。
一歩間違えたら、両足を焼き尽くされる所だ。
「次は本気で当てるわよ・・さっさと行きなさい!」
「わ、わかった、わかったからっ!!」
慌ててその場から逃げ出す雪人の様子を美沙は冷めた目で睨み付けていたが、やがてその姿が見えなくなった頃、下からの笑い声に思わず目を向けた。
「と、虎雄!? 起きてたの!?」
「あれだけやってたら起きるよ。それにしても雪人君も災難だな」
「いいのよ、あんなヤツ。あれくらいやんなきゃ、踏ん切り付かないんだから」
そう言ってそっぽを向く美沙だったが、その頬は赤く染まっている。
「顔、真っ赤だぞ」
「うーーーーっ!!」
更に耳まで真っ赤にしてポカポカと虎雄の胸を叩くが、さすがに怪我の為、いつものようには受け止めて貰えなかった。
「い、いつつつっ」
「あっ、ご、ごめん、虎雄! 大丈夫?」
そう言って心配気に覗き込んだ美沙だったが・・次の瞬間。
「きゃっ!」
いきなり虎雄に抱きしめられて、美沙は慌てて離れようとするが、傷だらけの身体のどこにこんな力があるのか、一向に離れることが出来なかった。
「ちょ、ちょっと虎雄・・」
美沙の言葉にも虎雄は一切答えず、ただしっかりと美沙を抱きしめたまま、目を閉じて眠ったふりをしている。
「あ〜ん、もう、虎雄〜っ」
真っ赤になった美沙の声が、赤く染まりかけた空に響いていた・・
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