斬魔大聖デモンベイン SS 『魔導探偵物語』
by Sin



第2話 商店街の人気者!?


 特にあてがある訳でもなく、俺はいつものようにぶらぶらと商店街を歩き回る。

 毎度のようにアルは辺りの出店を覗いては「おぉ、これは…」とか、「九郎、あれ欲しいぞ!」とか、好き放題言ってくれてる。

 う〜ん、毎晩のあの時は、ここまでお子様じゃあないんだが……

「何をぶつぶつ言っておるのだ、九郎?」
「お前の夜と昼の変わりっぷりに、心底感心してただけさ」
「な、何を言っておるのだ、このうつけが……」
 そう言って真っ赤になるアル。
 
 こんな所に、かなり萌えるんだよな……って、んなこと言ってるから、ロリコンだの、変質者だの、おまけに『産まれてきてどーもすみません』的な扱いを受ける羽目に…

「何も自分で自分を奈落の底に落とさんでも……」

 アルは溜息をついて、んなこと言ってるけどよぉ……

「ほら、奥さん。あの人、噂の……」
「ええ、ええ、知ってますとも。あんなに可愛らしい女の子を、毎晩、玩んでいるとか……」
「これまでにも何人もの幼い少女を孕ませたとか……」
「近づいただけで、妊娠させられるとか……」
「「「「ほんとに、怖いですわねぇぇぇ」」」」

 周りから聞こえてくる言葉に、俺の怒りは爆発寸前!
 
「………黙って聞いてりゃ言いたい放題……テメェら……大概にしねぇと、マジに倫理コードに引っかかるようなお仕置きぶちかましてやろうかぁぁぁっ!!」

 俺のその言葉に、一斉に蜘蛛の子を散らすように逃げ出す奴等。

 そのくせ、影でこそこそと言いたい放題……

「なんで、なんでこんなにも人々のために奉仕し続けている俺が、こんなにも最低の扱いを…」
「ふむ…やはり、自業自得…だな」
「なっ……アル〜〜〜っ!!」
「事実ではないか。それに奉仕し続けているなどと言っておるが、たんに真っ当な仕事で金を稼ぐことができず、挙げ句の果てに、あらゆるトラブルに足を突っ込んでは、被害ばかり被っておるだけではないか。これを自業自得と言わず、なんと言う?」
「うぅぅぅ………」
「な、なんだ? 怒ったのか?」
「うわ〜〜ん、アルがいじめる〜〜〜」
「な、汝はぁっ! そう言う情けないことを、公衆の面前で堂々と言うな!」
「こうなったら仕方ない。うん、今日はこの辺で切り上げて、お仕置きターイムとしゃれ込むか!」
「込むなっ!!」
「よし、そうと決まったら、急いで帰るぞ、アル!」
「決まってないっ! ちょ、ちょっと、待て、九郎!! にゃ!? にゃああああああっ!!」
 一気にアルの手を引いて町中をダッシュする俺。
「く、くろう〜〜〜〜〜っ、て、てをはなせ〜〜〜〜〜〜っ!」
「断る」
「な、汝は、なんでこんな事にだけ、無限に力を発揮するのだ〜〜〜〜っ!!」

 アルの抗議を完璧に無視して、俺は全力で走る。
 一刻も早く、この俺の、俺達の、理想郷を実現するために!

 だが……
 俺の理想郷実現は…あまりにも意外な展開に阻まれた。

「おぉっと、そこを行くのは大十字九郎ではないか〜っ! うぬぬぬぬ……ここで会ったが百年目! 今日こそ、決着を付けてやるのであ〜る!」
「博士、以前に会ってからまだ13日と9時間23分42秒しか経ってないロボ」
「なんと! ふむ、確かに。では、言い直そう。大十字九郎! ここであったが、13日と9時間23分42秒!!」
「細かっ!」
「あ、すでに8秒過ぎたから、50秒だロボ」
「がび〜〜〜ん! 吾輩の知らぬ間に時の渦の直中にぐるりぐるりと周りに回って、美味しそうなバターになりましたとさ(原材料:虎)」
 相変わらず、わけのわからん人外の台詞をのたまってやがるな、こいつは!

「やかましい! 人間の言葉で喋れ、ドクターウェスト! それに、エルザ! テメエら、こんな所で何してやがる!!」
「ふむ、解らぬか? 解らぬであろう。この、大・天・才! ドクタァァァァ・ウェストォォォォォォッ! の考えなど、所詮凡人には理解できぬもの……ああ、偉大すぎる吾輩を許せ……」
「○○○○の分際で、くだらねぇこと言ってんじゃねぇ! また街を破壊しようなんて企んでんなら…アルっ!」
「うむっ!」
 唇が重なると同時に、俺達は光に包まれ、俺の中にアルの力が流れ込んでくる。
 やがて光が晴れると、俺の姿はマギウス・スタイルへと変わっていた。
「くだらねえ真似してみろ…ただじゃあ済まさねぇぞ、ドクターウエスト!」
 
 バルザイの偃月刀を召還し、切っ先を突きつけて言い放ったのだが…
 ウェストの奴は興味なさそうに、鼻を鳴らした。
「ふん、今日の所は自主休業であるからして、わざわざ破壊する気など、無いのである」
「自主休業!? って……はぁ…やっぱりこの親にしてこの子か……」
 見比べながら言った俺の言葉に、敏感にエルザが反応する。

「こんな変人と一緒にしないで欲しいロボ」
「エ、エルザ!?」
「自分の作った物にまで見放されたか、さすがは変人、奇人の集大成だの」
「お、おのれぇぇっ、大十字九郎! よくも吾輩を愚弄してくれたであるな! こうなれば、現在開発中、『ウルトラ・スーパーウェスト28号GX、愛は世界を救う!』をもって、一撃の物に粉砕してくれる! エルザ!!」
 そう言ってウェストの奴が振り返ったその時だった。
 楽しげに手を振りながら駈けてくる少女の姿が……

「やっほ〜エルザお姉ちゃん!」
「あ、リーザロボ」
「パパさんもこんにちはです」
「うむ、久しぶりであるな」
 何気なく挨拶を交わす2人。
 だが…ちょっと待て…今何か、変な言葉を聞いたような…?

「「パパさん?」」
 どうやらアルも同じ事を考えていたらしい。
 声が重なった。

「エルザお姉ちゃんの産みの親だから、パパさんです」
「「なるほど」」
 少女の説明に、また俺達の声がハモった。
「……あ、産みの親なら……ママさん?」
「やめておけ、気色の悪い…」
 心底嫌そうに言うアルに笑う少女。

「あ、えっと……初めまして。リーザです」
「俺は、大十字九郎。こっちは…」
「妾はアル・アジフ。九郎の所有物だ」
「しょ、しょゆっ!?」
 アルの言葉に、リーザは一瞬顔を引きつらせて後退る。

「おい…アル。お前、なんか最近わざとそうやって誤解されるような言い方してないか?」
「誤解ではないぞ。妾はこの髪の一本まで、汝の物だ。違うか?」
「ま、まあ、確かに……」
「であろう? ならば誤解ではない」
 そう答えたアルに、いまいち納得できない気分だったが、とりあえず納得しておくことにした。

「………え、えと……だ、大十字さんって、アルちゃんの……何?」
「何って言われても……なぁ?」
「我が主、我が友、そして妾の永遠の伴侶、それが汝であろう?」
「ん、まあ、そんなとこだな」
「は、伴侶〜〜〜っ!? え、え、えっと、そ、そんなちっちゃい子と!?」
「ちっちゃいって……ああ、そう言えば、今のお前は確かに小さいな」
「妾の力の殆どが、汝と1つになっておるからな。どうやら今はこの○○○○も悪さをしでかすつもりは無さそうだ。マギウス・スタイルを解くぞ」
「ああ」
 俺がそう言うと同時に、一瞬の光。
 それが治まった後には、もとの姿の俺と、傍らに立つアルの姿が。

「え? え? えええええっ!?」

 驚きに目を白黒させているリーザ。
 そりゃあ、一応変身みたいなものだからな。

「改めて初めまして。これが俺の本当の姿。そしてこいつが、俺の相棒のアルだ」
 そう言ってアルの肩を抱き寄せる。
「こ、こら、九郎……」
 少し強く抱きしめてやったら、アルは照れくさそうに身悶えした。

「まったく汝は……リーザ、これが妾の本来の姿だ」
「い、い、今のって、ま、魔術!?」
「ああ、九郎は魔術師。妾は九郎の所有する魔導書、アル・アジフだ。ネクロノミコンと名乗った方が、通りはよいか?」
 そう言ってにやりと笑ってみせるアルに、リーザは驚きを隠せずにいる様子だったが、やがて……

「すごい……すごいすごいすごいすごいすごいすごいすごい、すっご〜〜〜〜い!!」
「にゃあっ!?」
「うおっ!?」
 突然の叫びに、思わず引きつる俺達。

「魔術なんて初めて見た! ねぇねぇねぇ、今のどうやったの? どうやったらそんなことできるの? 私にもできる?」
「え、あ、えっと………アル?」
「妾に振るな」
 大はしゃぎのリーザ。さすがにこれは対応に困るな……
 でも、この感覚……どこかで……

「――っ!?」

 脳裏を過ぎる1人の少女の姿……

「どうした……九郎?」
「……エンネア…」

 思わず溢れた言葉……

 その呟きに、アルも俺の思いを理解したのか、そっと俺の胸に頬を押しつけて抱きついてきた。

「……汝にあの事を引きずるなとは言わぬ…妾とて…嫌いではなかった……毎日喧嘩をしたり、笑い合ったり……本当は…楽しかった……」
「アル…」
「だが、あまり哀しい顔をするでない……妾まで…哀しくなるではないか……」
「……ああ、悪ィな、アル。今はお前がこうして俺の側にいてくれる。胸の隙間を埋めてくれる…だから、大丈夫だ……」
「ん……九郎……」
 見つめ合う俺達。
 だが、その時……

「え、え〜っと……その……こほん」
 ふと、声が聞こえて俺達が振り返ると、いつの間には周囲は人集り。
 その視線は……俺とアルに注がれていた。

「九郎ちゃ〜ん、アルちゃん、2人とも仲の良いのはいいんだけど……もうちょっと時と場所を考えてくれないかなぁ?」
「な、汝!?」
「らっ、ライカさん!?」
「やっほ〜九郎ちゃん。それにしても良いの?」
「何が?」
「2人とも、注目の的だけど?」
「え? ああっ!? て、テメェら、何見てやがんだぁぁっ!!」
「こ、こ、この、うつけどもがぁぁぁッ!!」
 その叫びと共に、アルの魔術が暴発。
 辺りを取り囲んでいた見物人達を一斉に吹っ飛ばした。

 何故かライカさんやウェスト達はまったく平気でいたけど……

「まったく…暇人どもが……」
「アル、今のはちょっとやりすぎ…」
「良いのだっ!!」
「はい……」

 と、その時、俺の目の端に奇妙な物が映った。

「ん? あれは……」
「どうした、九郎?」
「あ、いや、あれは……何かと思ってさ……」

 俺の指さす先。
 そこには、1人の買い物をしているおばさんと……何故か二本足で歩き回る“冷蔵庫”の姿が……

「な、なぁっ!?」
「冷蔵庫!?」

 驚く俺達の声が聞こえたのか、その歩く冷蔵庫はゆっくりと振り返ると、本体の横に付いた腕と思しき物を挙げて挨拶した。

「挨拶……したぞ?」
「う、うむ……」

 その時、おばさんも俺達に気付いたのか、振り返ると楽しそうに歩み寄ってきた。

「あ、え〜〜っと……」

 なんとか答えようとした俺だったが、おばさんは俺達には見向きもしないで、ウェストの所へ……

「ウェストさん、お久しぶり。貴方に作ってもらったこの子、ほんとに助かるわぁ。エルザちゃんも元気?」
「おお、久しぶりであるな。『スーパーウェスト28号SS、別名フリーズくん』も役に立っているようで何より」
「エルザ、元気だロボ」
 楽しげに挨拶する連中の姿。
 それどころか、商店街の連中は気さくにウェスト達と話してやがる。
 どうなってんだ?

「おい、ウェスト。一体何がどうなってんだ?」
「ん? 見て解らぬか? ここの輩は吾輩の力を認めている。だからそれ相応の対応をしているまでのこと」
「……つまり何か? 今まで一度も他人に認められなかったから、初めて認めてくれたのが嬉しくて、色々手助けしてやったって事か……?」
「その通りである!」
「博士、情けないことを自信たっぷりに言うのは恥ずかしいロボ」
「な、ぬわぁんとぉっ! エルザ、いつから吾輩にそんな…オーマイ、愛しのエルザ」
「エルザは、ダーリンのものだロボ」
「が〜〜〜〜ん。だ、大十字九郎! き、貴様はいつの間にエルザまで……」
「出すかっ! 大体俺にはアルがいるんだ。他に手を出す必要が何処にある」
 俺がそう言ってアルを抱きしめると、アルは嬉しそうに、エルザは膨れっ面で俺を見つめた。

「うわぁ、九郎ちゃんとアルちゃんたらぁ……ライカお姉さん、恥ずかしくなっちゃう〜〜♪」
「勝手に言ってろ」
 冷め切ったアルの言葉にもめげることなく身体をくねらせているライカさんの姿に俺もさすがに溜息。

「アル、とりあえず問題は無さそうだし、帰るか」
「そうだな。解せぬが、今の許奴等に問題を起こす気は無さそうだ」
「じゃあな、ウェスト、エルザ。まあ街の連中と楽しくやってくれ」
 俺はそう言い残すと、マギウス・スタイルになって空へ。

「あっ、ダーリン、どこに行くロボ?」
「帰るんだよ。おまえらの相手をする必要も無さそうだしな」
「帰っちゃうロボ? エルザも……」
「来なくていい。それともなにか? 俺達の二人っきりの時間を見たいとか……?」
 俺の言葉にエルザはなにやらしばらく考えていたが、やがて頬を赤らめたエルザは…

「……結論…大十字九郎とアル・アジフの個人的時間。他者の介入を赦さず」
「そう言うこと。んじゃ、またな」

 エルザにそう言って、俺達は事務所に向かう。

「にしても……ウェスト達があんなに街の連中と仲良くやってるとはな…」
「うむ…まったく意外だ」
「さてと…そんじゃあ、さっさと帰ってお楽しみタイムとしゃれ込むか」
「込まんでいい!」
「気にするな」
「気にっ……ン、ンうぅぅぅっ!」
 アルが何かを言おうとしたのを、俺は唇を塞いで止めた。

「んじゃ、急ぐぞ」
「………九郎の…うつけ……が……」
「ん? なんか言ったか?」
「なんでもない……」

 憮然と……だけど顔は真っ赤にして言ったアルの姿。
 俺はその身体をギュッと抱きしめると、事務所への帰路を急いだ……




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