斬魔大聖デモンベイン SS 『魔導探偵物語』
by Sin



第1話 姫さんの依頼


 その日、事務所に帰った俺を待っていたのは、のんびりとくつろぐアルの姿と、そしてもう一つ・・

「………おい、アル」
「なんだ? 九郎」
「…これはなんだ?」
 そう言って俺が指さした先には、プルプルと蠢くオレンジ色の物体が…

「何だ、汝も案外薄情だな。ダンセイニだ。覚えておらぬのか?」
「てけり・り?」
 いや、そうやってプルプルされても…

「それは知ってる。だけど、何でこいつがここにいるんだ?」
「決まっておろう。以前のように妾のベッドとして役立って貰う為だ」
 なにを分かり切った事を…と言った感じで言い切るアル。
 それは解ってる…解りたくないけど……
 だけど、それは………その……違うだろ……

「だ〜か〜ら〜〜〜っ、何でダンセイニが必要なんだ? 今まで俺と…その…」
 俺がそう言った瞬間、アルの顔が真っ赤に染まった。
 視線をあちこちに彷徨わせたあげく、涙目で俺を睨んでくる。

「ーーーっ!? う、うつけっ! な、汝は何でそう恥ずかしいことを躊躇いもなく言えるのだっ!!」
「てけり・り」
「う、うるさい! 汝は黙っておれ!」
「てけり・り…」
 さっきのは笑って、今のは落ち込んだんだろうな……多分…
 とりあえず、ダンセイニに当たり散らした事で、少し落ち着いたみたいだ。
 更に真っ赤になって視線を彷徨わせながら、ポツポツと呟く。

「……そ、その……何だ…な、汝と共に過ごすのならば……より良い場所の方が…互いに良いのではないかと……」
「それで何でダンセイニ!?」
「ん? 快適だぞ?」
 どこがだっ!
 心の中で思いっきり突っ込んだ拍子に、思わず視線をダンセイニに向けてしまう。
「てけり・り♪」
 うわ…嬉しそうに手招きしてるし…

「前にも言ったけど、怖いんだよ! マジで!!」
「どうしても嫌なのか?」
 俺の言葉に、アルは急に落ち込んだ表情を見せる。
「全力をもって断る!」
「…それ程までに…妾と一緒に眠るのが……嫌…なのか…?」
 涙目でそう訴えてくるけど……そうじゃねえだろ!!
「んなわけあるかっ!」
「だったら!」
「だから……ダンセイニで寝るのが嫌だって言ってるんだよ!!」
「……しかし…」
 なんで、ここまでこだわるかねぇ……ったく……

「………ったく、しょうがねぇなぁ……じゃあ、今度姫さんからギャラが入ったら、もっといいベッドにするから、それまで我慢してくれ」
「なら、それまではダンセイニで!」
「断る!(0.02秒)」
 ちょうどその時だった。

− ピンポーン

「ん? は〜い、開いてるぞ」
「失礼します」
 そう言って入ってきたのは、覇道財閥の執事さんだった。

「あれ、執事さん」
「先日はお世話になりました、大十字様。アル様も、ご機嫌麗しく」
「うむ。従者も達者にしているようだな」
 執事さんの言葉にアルも身体を起こして挨拶を返す。
 その時、執事さんの背後から声がかけられた。
「挨拶はその辺でよろしいのではなくて、ウインフィールド?」
「はっ」
 サッと身を退く執事さんの背後から姿を見せたのは、1人の女性。
 覇道財閥総帥、覇道瑠璃……姫さんだった。
 
 別に嫌じゃないんだけど、なんとなく苦手なんだよな、この人。
 俺とは世界が違うって言うか……
 まあ、それはそれで良いんだけど…

「姫さんも一緒か。それで、俺に何か用かな?」
「用がなければ来て欲しくはないといった口振りですわね」
 一瞬、姫さんの背後に『ゴゴゴゴゴゴゴゴ……』といった文字が見えた気がしたんだが……気のせいか?
 全く…ドクターウェストの奴じゃあるまいし……

「あ、いや、そう言うわけじゃ…」
「……まあ、いいでしょう。それはともかく……大十字さん、あなたに仕事を依頼したいのですが…」

 思わぬ言葉に重なる記憶…

『魔導書を探して頂きたいのです』

 って、それはねえよな。第一、最高峰の魔導書がここにいるんだし……

「俺に? 覇道財閥お抱えの探偵じゃ無理なのか?」
「ええ。あなたにしかできない仕事です」
「……って事は、また魔術絡みか…」
「それもありますが…」
 そう言って、珍しく言葉を濁す姫さん。
 なにかよっぽど言いにくい事なのか?

「大十字さん、先日あなたがあのドクターウエストの破壊ロボを2丁の拳銃のみで倒されたと聞いたのですが、本当ですか?」
「ああ、まあ…」
「ほう…妾と再会する前にも、その様な事があったのか?」
「じゃなきゃ、あいつと会った時にもっと驚いてるだろ」
「なるほど。明解な答えだ」
「そこで、です」
 区切るように言った姫さんの迫力に思わず怯む。

「あ、ああ」
「大十字さん。貴方にお願いしたいのは、ドクターウェストの対策です」
「なっ……」
「知っての通り、あのドクターウェストが開発した破壊ロボは、アーカムシティー最大の驚異となっています。すでに警察力が及ぶ所ではありません。ですが……」
「俺なら、あいつの破壊ロボを止められる。だから……って事か?」
「そうです。情けない事ですが我々覇道の力をもってしても、あの驚異に打ち勝つ事は出来なかった……唯一、貴方だけがあの力に対抗しうる力をもっているのです」
「……話は分かったけど……できれば俺は、あいつに関わりたくないんだよなぁ……」
「うむ、あやつと関わるとろくな事が無さそうだ」
 俺の言葉に頷くアル。
 そんな俺達の言葉をまるで見透かしていたかのように、一瞬、姫さんの口元に笑みが浮かんだ気がした。

「もちろん、危険なお仕事となるかと思いますので、十分に対価をお支払いさせて頂きます。ウィンフィールド」
「はい、お嬢さま」
 そう答えると、執事さんは目の前のテーブルに、いくつかのジュラルミンケースを並べる。そして……その蓋が開かれた……

「う、う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!? こ、これはっ!?」
「とりあえず、契約料として500万……ウェストの破壊工作を事前に防いで頂く度に更に200万。破壊ロボの破壊で300万。もちろん、諸費用は別途お支払いさせて頂きます」
「いかがですか? 引き受けては……」
「引き受けましょう!(0.002秒)」

 ………前にもこんな事があったような………はぁ……

「小娘の手に簡単にのせられおって……この、うつけが……」

 呆れたように呟いたアル。
 返す言葉もなく、頬を掻く俺。
 俺達はウェストの破壊行為を未然に防ぐ為、事務所をあとにするのだった……



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