斬魔大聖デモンベイン SS
『力の意味』
by Sin
第9話
漆黒の闇……
そしてその中に浮かぶ、蒼く美しい宝石のような輝き……
「また……この場所に来たんだな……」
「ああ……」
「すっごく綺麗だね……」
まるで包み込まれるような温もりと優しさを俺達に与えてくれる――地球。
そして……
「絶対に、壊させやしない……アル」
「……うむ」
「リル…」
「……うんっ」
力強く頷きを返してくる2人。
遙か彼方に見えるは邪神ガタノトーア。
月よりも遠い距離にいる奴を睨み据えて、再びこの場に聖句が木霊する。
「憎悪の空より来たりて……」
「正しき怒りを胸に……」
「我らは魔を断つ剣を執る!」
「「「汝、無垢なる刃……デモンベイン!!」」」
真空にして無音の宇宙に漆黒の闇に、されど響き渡る。
敢然たる斬魔の意志を瞳に宿し、刃金の巨神が闇を斬って翔る。
その速度はすでに音速を遙かに超え、高速の域に達していた。
見る間に邪神の姿が目前に迫る。
遅い来る触手、触腕、閃光。
その全てを今のデモンベインは輝くフレアを後に残しながら、あり得ない角度で回避していく。
「断鎖術式壱号ティマイオス、弐号クリティアス、解放っ! パパ!!」
「やれぃ、九郎!!」
「応よ! まずは挨拶代わりに受け取りやがれ! アトランティス・トルネード・ストライィィィク!!」
デモンベインに迫る触腕を脚部シールドから発生する爆発的エネルギーが粉砕し、次々に千切り飛ばす。
だが、その度に一瞬で再生して再び襲いかかってくる。
そして続けざまに襲い来る閃光。
その全てをニトクリスの鏡が反射し、逆に邪神を襲う刃となった。
潰され、灼かれ、引き裂かれ、それでも繰り返す再生。繰り返す破壊。
無限に繰り返される破壊と再生の輪舞。
永遠に続くかと思われたその舞曲だったが……
「先程までの我等と同じだなどと思うでないぞ!」
「リルも居るんだからっ!」
「応よ! どこまで再生できるか試してやらぁっ!! 断鎖術式、ヘルモクラテス開放!!」
俺の身体を走る術式のラインが赤い輝きを放って高速に流れる。
そしてそれがデモンベインとリンクした瞬間!
「―――――――――――――――――――――――――――――!!」
それは音の域を超えていた。
ただひたすらに無音の闇を切り裂いて響き渡る斬魔の―――
まるで深紅の光になったかのような輝きと共に、触腕触手の壁を貫いて―――
2つの叫び(クライ)が1つとなって響き渡る。
「先はようもやってくれたのぅ、邪神。決め時を邪魔してくれた礼、しかとその身に刻み込んでやるわ!!」
「リルも許さないんだからっ!!」
「俺達の力、デモンベインの力、ここからが本番だ!!」
言いながら、すでにデモンベインの両手には巨大な銃が。
漆黒の闇すらも焦がす紅蓮の炎、クトゥグァ。
星の輝きすらも凍てつかす白銀の氷嵐、イタクァ。
そんなデモンベインに再び再生した邪神の触腕が襲いかかる。
「お前が奪った命の怒りと悲しみを喰らえ―――クトゥグァ! イタクァ! 神獣形態!!」
眼前まで迫った触手はその次の瞬間、凍て付き、灼き尽くされた。
更にその本体へと襲いかかる爆炎と氷嵐。
しかし、その程度で片づくなんて思っちゃいない。
「おつりはいらねぇ、とっときな!」
再び構えるもう一つのクトゥグァとイタクァ。
「多重召還ってのはこういう使い方も出来るんだぜ!! クトゥグァ! イタクァ! 神獣形態!!」
双撃神獣弾の二連撃。
そして更に……
「ロイガー! ツァール! 二重召還!!」
召還するのは二対の小刀。
それを組み合わせて一気に投擲。
反撃をしようとしてきたガタノトーアの触手を悉く引き裂いて飛翔する。
圧倒的。
まさにそう言っても過言ではない状況。
だが……
「aowゅanう゛ぃあぃじぇobz9wambaあfぁえふぃじbう゛ぁおわえじいおぃ!!」
耳を劈くような咆哮と共に邪神の放った光がデモンベインを貫く。
「gうぃおあびょぉえふぉいえぃぶいlないぅぅをおわ;ぃい!!」
それは幾十、幾百、幾千と放たれ、デモンベインを粉砕して………
「一体何を相手にしておるのだ、うつけが」
その瞬間、全てが砕け散った。
「夢は見れたかい? だけどな……夢は寝てから見るもんだ」
「感謝するがよい、この妾がしっかりと寝付かせてやろう。永遠の眠りにな!!」
アルが言い放つと同時にデモンベインの両手が邪神の身体を捉える。
「イァ! クトゥグァ!! イァ! イタクァ!!」
身を隠している間に完成させた術式を同時に開放する。
その触れている両手を通して、邪神の体内へ。
「灼き尽くし凍て付かせ!!」
「――――――――――――――――――――――――!?」
俺達の叫びが、デモンベインの叫びが、邪神の叫びが辺りに響き渡る。
そして……
「ヒラニプラシステム・アクセス! ママ!!」
「ああ! ナアカルコード承認、術式解凍!! 九郎!!」
「応よ!! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
爆炎を上げ、凍て付かせた身体を軋ませながら、邪神が俺達へと反撃を試みる。
だが……遅い!
「光差す世界に汝ら暗黒住まう場所無し!!」
「「乾かず、飢えず、無に……帰れ!」」
「レムリアァァァァッ・インパクトォオォォォォォォッ!!」
輝く右手を邪神へと叩き付ける。
破壊の術式が今度こそ完全にその動きを封じ込めた。
「「昇華!!」」
究極にして極限の熱量が、邪神ガタノトーアを蝕み侵し喰らい尽くしていく。
最早消滅間近で反撃など思いもよらないその瞬間……
唐突に襲い来る閃光。
そして……衝撃。
「―――――――――っ!? ぐっぁがあああああああああああああっ!!」
「「きゃああああああああああああっ!!」」
激痛。
周囲に紫電が舞い、血飛沫が飛び散る。
一瞬の油断。
今度こそ確実に決まった。
その思いが隙になる。
「……ぐ………がはっ……!!」
デモンベインは左腕を粉砕され、その衝撃と魔力が俺の身体を蝕む。
「く、九郎!!」
「パパ! 大丈夫!?」
慌てて飛びついてくる2人だったが、まだ戦いが終わった訳じゃない。
痛みに失いそうになる意識を必死に止めて何とか立ち上がった。
「………拙い!!」
アルの叫び……
目を向けた先には…消滅しかけたガタノトーアから今にも放たれようとしているとてつもない神気。
今の俺達あれをくらったら……
「くぅっ! 動け! 動いてくれ、デモンベイン!!」
「駄目……なのか……っ!?」
「パパ! ママぁっ!」
目を見開き、ただそれが放たれる瞬間を待つしかない俺達……
だが、その時だった……
『……術種選択:
「「「―――――っ!?」」」
閃光―――。
目の前が真っ白に輝き、周囲の様子が全く判らない。
一体どうなったのか……
俺達は……生きているのか……?
「……ろ…う……九郎……!」
閃光に一時的に目をやられたのか、何も見えない。
そんな中、微かに聞こえた声を頼りに手を伸ばす。
微かに指先に触れる感触にそれを掴んだのだが……
「………あんっ…」
なにやら柔らかい感触……
微かに聞こえたのは……妙に色っぽい声……
そのまましばらく手探りで弄っていると、その柔らかい物体がぷるぷると震えだした。
「…ん…んん……ぁっ………い…いぃぃ………」
「………い?」
「……いい加減にせんか、この色ぼけがぁぁぁァァッ!!」
叫びと同時にとてつもない衝撃が俺の頬を捉え……
「ぶげらぁぁぁぁぁっ!?」
……容赦なくぶっ飛ばされる俺。
今の身体じゃ、当然意識ごと刈り取られる。つーか、普通死ぬぞ……
「……あ…く、九郎!? し、しっかりせぬかぁぁぁぁっ!!」
「無茶……言うな……がくっ……」
「く、九郎――――――――――――――――っ!!」
それからしばらくの時が流れ……
「………死ぬかと思ったぞ……」
「……す、すまぬ……やりすぎた……」
ジト目で見つめる俺に、アルは小さくなって悄げていた。
「だ、だが、汝だって悪いのだぞ! い、いきなりこんな所で胸を揉みしだくなど……感じてしまったではないか……」
「へ?」
「な、なんでもない!! そ、それはともかく……身体は大丈夫……なのか?」
頬を赤く染めて上目遣いの視線で見つめてくるアルに思わず抱きしめたくなったが、今は耐える。
「ああ、何とかって所だけどな。んで? あいつはどうなった?」
「……完全に消滅しておるよ…だが……」
「あの声……だろ?」
「うむ。あの声は……忘れようにも、忘れられぬ……」
あの時、俺達を救ったあの閃光……
そして……声。
「真逆……お前なのか……エンネア……」
最早痕跡すら残らぬ空間に、俺達の問いかけは空しく消えていくだけだった……
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