Short Short 劇場
≪梁 明≫様 Ver.
第9幕
『遺産』
「なぁ、何でオレまでが呼ばれなければならないんだ?」
「良くは判りませんが、お嬢様のたっての願いですので……」
首をひねりながら、瑠璃の執務室へと入っていく。
「ようこそ、大十字様……実は、この部屋に棚を整理しておりましたら、御爺様の古いファイルが見つかったんですの。
それで、一体どんなものなのか、ぜひ確認して頂きたいのです」
「なんでまた……」
九郎の疑問ももっともだ。
「御爺様はかねてより、様々な魔導書を集めておいででした。それを素人の私が開けば、どんな恐ろしいことが起こるのか、それが心配で……」
「要するに、俺に危険物処理を任せたいと?」
「有り体に言ってしまえばその通りです」
「はあ……」
ため息をつく九郎だった。目の前のテーブルには、所狭しとファイルが並んでいる。だが、ここは引き受けて、特別手当を貰った方がよいと気付く。
「よっしゃ、終わったらお礼は弾んでくれよ?」
「やや、判っております」
九郎はそのファイルを手に取った。
「こ……これは…………」
九郎の手が素早く動く。ページあたり五秒という速さだ。
やがて、九郎は全てのファイルに目を通し終わった。
「ふううううぅぅ……」
何かの満足感が混じった長い息を吐くと、瑠璃に向き直る。
「これは危険なものじゃない。いや、姫さんにとっては、ある意味、危険だな。
とにかく、いいものを拝ませて貰った」
そう言って席を立ち、さっさと部屋を出て行った。
あとに残った瑠璃は、恐る恐るファイルを手に取った。
それは、アルバムだった。瑠璃が生まれ、祖父である剛蔵が死ぬまでの間の。
最初は赤ん坊の姿。それは徐々に成長し、最近の瑠璃までが延々と続いていた。
様々な写真があった。笑顔の写真、ふくれっ面の写真。泣き、怒り、黙り、悲しみ……
そして、様々な角度からの写真も多数あった。
下からのアオリはまだ良い。着替え中だとか、寝姿だとか、入浴シーンやシャワーシーンなど、いつの間にというものばかりがそれこそ大量にファイリングされていたのだ。
わなわなと瑠璃が震える。
「ぎゃああああぁあぁっ!! 御爺様ったら、何て写真を〜〜〜〜!!」
即座にファイルは焼却処分にされた。
「ふっふっふっ……残るは大十字さんの記憶のみ………」
昏い笑顔でハリセンを用意する瑠璃の姿があった。