狂科学ハンターREI SS 『桜の育児日記』 第1話
by Sin
「玲ーっ!」静まり返っていた『ギャラリー・HIME』に、突然、少女の声が響き渡った。
金色の髪をふわりとなびかせてHIMEに駆け込んできた少女の名はアリシア・ピッコロニーミ。この画廊のオーナーである姫城
玲の妹として共に暮らしているのだ。
「おかえり、アリシア。そんなに慌ててどうしたんだ?」
「あ、あのね、玲……」
珍しくアリシアが言葉に詰まっている。
「ほら、とにかくこれでも飲んで落ち着いて」
そう言ってレモンティーをアリシアの前に置くと、自分も口を付けたが、続けられた彼女の言葉に玲は口に含んだレモンティーを思わず吹き出した。
「あのね、赤ちゃん、落ちてたの」
「ぶっ!? こほっ、こほっ……ア、アリシア、今、なんて……?」
「だから、入り口の前に、赤ちゃんが落ちてたの。どうしよう……玲」
「ど、どうしようって……それって捨て子って事なのかな?」
「う、うん……多分……」
「えっと……で、その子は?」
玲がそう言うとアリシアは玄関に走り、一抱えのバスケットを持って戻ってきた。
「ほら、この子」
バスケットの中を覗いてみると、そこにはまだ生まれて間もないと思われる赤子がスヤスヤと眠っている。
「まだこんなに小さいのに……」
そう言って玲が赤ん坊を抱き上げると、途端に赤ん坊は火が点いたように泣き出した。
「わわっ!?」
慌ててもう一度寝かせようとするが全く泣き止む様子もなく、途方にくれながらも玲は赤ん坊をあやし続けていたが、その時不意に玄関の扉が開いた。
「やっほー玲くーん、いるー?」
「あっ、桜さん! ちょうど良かった!!」
「ほえ? どしたの? あーっ、赤ちゃんだー!! かっわいーっ! ね、ね、どーしたの、この子?」
「あ、えっと、実は……」
「ま、まさか! ……玲くんの……子?」
「ちっ、違うよ! HIMEの前に捨てられてたんだ」
「なんですってーーーっ!」
いきなりの桜の怒声に驚いた赤ん坊は更に激しく泣き出してしまう。
「ああっ、大声出しちゃ駄目だよ、桜さん」
「ご、ごめん。でも許せない……こんなに可愛い子を捨てるだなんて……」
そう言うと桜は赤ん坊をそっと抱き上げた。
「驚かしちゃってごめんね…ほら…ゆっくりお休み…お母さんはここにいますからね…」
優しく囁きかける桜の胸に抱かれてようやく落ち着いたのか、赤ん坊はやがてスヤスヤと寝息を立て始める。
「…桜さん……」
そんな彼女の姿を、玲はなんとなく不思議な気持ちで見つめていた。
「ねぇ…玲くん」
しばらくして、赤ん坊をあやしながら、桜は玲を呼び止める。
「ん、何かな?」
「この子のお母さん、何とか探してあげられないかな?」
「見つけたら……桜さん、どうする?」
「当然、ぶっ飛ばす!」
「……ま、まあ、そうだけど……」
「見つかるまでは……二人でこの子の親になってあげようよ。ね、玲くん」
そんな桜の言葉に玲は苦笑しながらも頷いた。
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