護くんに女神の祝福を! SS 『告白』
by Sin
− 吉村護です。今日、転校してきました。
何故だろう…あの微笑みが頭から離れない……
「鷹栖さん?」
あの笑顔を思い出すと…胸の奥が暖かくなってくる…
不思議…でも…心地良い……
「あのぉ…鷹栖……さん?」
……せっかく人が良い気分でいるって言うのに…邪魔ね…
私の思いに答えるように、ビアトリスが指先に小さな炎を宿す。
ピンッと弾くと、ふわりと放物線を描いて声の主の所へ。
「え、え、あ、あのっ!」
ボムッ…という鈍い破裂音と共に、ようやく静かになった。
「はぁ…っ……」
溜息。
窓の外を見ると、今朝咲かせた桜が風に舞っている。
何気なく下を見た私は、花壇に咲いたコスモスの花に気付いた。
思い立ったらじっとなんてしていられない。
窓から一気に外へと飛び出した。
「ちょ、ちょっと鷹栖さん!?」
ざわめく教室。
馬鹿みたい。私を誰だと思っているの…?
ふわりと音も立てずに着地。
まだざわついている教室を完全に無視して、私は花壇へと歩いていった。
「…好き…嫌い…好き…嫌い…好き…嫌い…」
私はいつの間にかコスモスを摘んで、花占いを始めていた。
「…好き…嫌い…好き…きら…」
―――――――――――――ボッ!
ビアトリスの炎がコスモスを一瞬で焼き尽くす。
うん、占いなんてしてない。証拠もない。ないもんっ!!
誰にって訳じゃないけど、言い聞かせる。
授業なんてたいしたことしてないけど…それでもいつも以上に身が入らない……
なんだか…私…変……
あの…護の笑顔を思い出すたびに……胸の奥が…熱くて…苦しくて……
まさか…これって……
− 恋煩い −
「な、ないないっ! そんなわけ……」
− 好き −
頭の中でその言葉がグルグル回ってる……
「なんで…? 今朝…会っただけ、なのよ…?」
− 一目惚れ −
「まさか…そんな……わ、私が…え、えっと…え…あ……」
ふと、周囲の視線に気付く。
まるで珍獣でも見ているかのような、不思議そうな目で見ている……
「くっ……」
なんとなく居づらくなって、私は教室を出た。
「……絢子、そこで何をしてますの?」
声に振り返ると、いつもの摩訶不思議な髪型をした汐音がニコニコと微笑んで立っていた。
「べ、別に、なんでもないわ」
今はとにかく余計な事を考えたくない。
汐音には構わず、素っ気なく答えると、その場を離れようとする。
でも……
「恋煩い、ですの?」
その言葉に思わず足が止まる。
自分でも分かるくらい、顔が熱い。
きっと真っ赤に……なるな……なるなっ!
汐音にだけはそんなとこ見られる訳には……
「あらあら、真っ赤……図星ですわね」
「………くっ……」
思わず唇を噛んだ。
今すぐ氷の中にでも閉じこめようか……それとも燃やし尽くそうか……
「でも、告白は……まだの様子ですわね」
「うっ………」
思わず怯んだ私に汐音は「ふふん……」と余裕の表情……
う〜っ、なんだかとても悔しい……!
「そ、そんな事、あんたに言われる筋合いはないわ……」
「………あら……鷹栖絢子ともあろう女が、人前で好きだと告げる度胸もないなんて、そんなことはないですわよね?」
そう言うとまた余裕の笑み……
………もう、我慢の限界……
「あ、当たり前でしょう!! こ、告白の1つや2つ……い、いつだって出来るわよ!!」
「そう? では頑張って下さいね、絢子」
挑発に乗ってしまった……そう気付いた時はもう遅かった……。
震える足をなんとか進めて、辿り着いた1年基礎2科の教室前……
「た、鷹栖先輩……」
怯えた目で私を見てくる一年の生徒達……
……まったく……そんなに怯えることないでしょう……
そう思いながら周りを見回す。
そして………
………見つけた。
私と目が合った瞬間、なんだか戸惑った顔をしたけど……
とにかく聞く事を聞いておかないと……
「あなた。吉村護」
胸の奥が張り裂けそう……
そんな私にまた護は笑顔を向けてくる。は、恥ずかしい……
「質問よ。わ、笑ってないで真剣に答えなさい!」
思わず強く言ってしまった……
こんな時なのに……
すっかり怯んでしまっている護に、私はやっとの思いで口を開いた。
「あなた、恋人はいるの?」
「…………は?」
気の抜けた返事に、思わず手に力が入る。
べき、とか変な音がしたけど、今はそんなコトどうでもいい。
「な、なんの話なんですか? 話が、全然見えないんですけど……」
「だから! その、こ……交際している相手はいるのかって訊いてるのよ!」
「交際……ですか?」
なかなか答えに辿り着かない……
不安で胸がいっぱいなのに……張り裂けてしまいそうなのに……なんで……
なんで答えてくれないのよ……
「いないの!? それとも、い、いるのっ!?」
「いません、けど……?」
その答えに、思わず溜息。
い、いないんだ……よ、良かった………
「そ、そう! わかったわ」
やっとの思いでそれだけ答える。
うん、今はとりあえずまだ恋人がいないってことが分かっただけでも……
「あの」
「な、な、なに!?」
突然護に呼びかけられて、私は思わず跳びあがるところだった。
胸の奥の動揺を悟られないように、必死に取り繕う。
「それで、僕に何か用事ですか?」
「え! あ、」
どうしよう……
今はここまでにするつもりだったのに……
なんて言えば……
えっと……
付き合って……
あなたが好き……
わたしの……彼氏……に……なって……
言えない! そんなこと、言えるわけがない!!
でも………でも………っ!
今、言わなくちゃ……もう……絶対に言えなくなる……っ!
迷う気持ちを振り払うように、こぶしを机に叩きつけた。
一瞬にして粉々になる机。
「へ……? 机が、え、あれ? ………わ!」
唖然としてその様子を見ていた護を、私は襟首を掴んで引き寄せる。
ちょっと勢いがつきすぎて、キ、キスしてしまいそうなくらい近い距離……
護の顔が赤い。でも……きっと私も……
「私と、…つ」
「つ?」
「あ…う…つき…ぁ……ぐ……っ……」
言葉が出ない。
思わず目を伏せてしまう。
………でも…でも……っ!!
無理矢理に気持ちを押し殺す。
そして顔を上げてもう一度しっかりと護の顔を見つめた。
「あなた、わ、私と……その、つ、つ、付き合いなさい!」
静寂。
言ってしまった。もう後戻りはできない。
「へ、返事は……そ、その……すぐに……とは言わないから……今日の放課後に……」
「は、はい……」
「それじゃ……放課後……待ってる……から……」
そう言って、私は護の教室を後にした。
もう胸は張り裂けそうな程高鳴っている。
生涯で……こんなに緊張したのは…初めて……
でも…こんな気持ちも…悪くないかも……
私と護の物語は……こうして幕を開けた………
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