護くんに女神の祝福を! SS
『人生最良の日』

by Sin

「僕の恋人になってください。・・僕は・・鷹栖さんが、大好きです!」

 まだ胸が高鳴ってる・・

 今日の放課後、屋上で護に呼び出された時は、何の話かと思った・・

 ずっと待っていた事だったけど・・あまりに突然だったから・・

「護は、本当にいいの?」

 また怪我をさせてしまうかもしれない・・ううん、怪我じゃ済まないかも・・
 でも護は・・

「そんな事言っても・・・鷹栖さんの事が好きなんだから、しょうがないじゃないですか! 鷹栖さんが僕と一緒にいるせいで誰かに負けたり、油断したり、そんな事になるんなら、僕は鷹栖さんを守れる位に強くなりますから! だから・・」

 真剣な瞳・・
 護の気持ちが・・すごく嬉しくて・・涙が溢れた・・

 あの後・・もし、生徒会長達が邪魔しなかったら・・

 ちょっと護が背伸びをしたら、触れてしまいそうなほど側にあった唇・・

 もしかしたら・・

 私・・あの時、そうなってもいいって・・思ってた・・

 護に初めての・・キス・・あげてもいいって・・

 だから・・

 目を閉じて・・受け止めようとしたのに・・

 邪魔された・・

「はぁ・・」

 溜息・・これで何回目だろう・・

 思い出す度に恥ずかしくて・・嬉しくて・・だから余計に・・
 邪魔した会長達の事が・・腹立たしくって仕方ない。

 机に飾った薔薇・・護が私に告白する時に渡してくれた・・
 見つめているとあの時の光景が目に浮かぶ。

 護の吐息を感じるくらいに近くて・・

 思いに耽っていると、ふとなにかの音がしている気がして振り返ると、電話が着信を示す音を響かせていた。

 慌てて電話に出る。
 なんとなくわかっていたのかもしれない・・
 だから、迷うことなく口にした。

「護?」
「あ、絢子さん? よかった。もう寝てしまったかと思った」
「ううん・・まだ眠れなくて・・」
「僕もです・・今日の事がずっと頭に浮かんでいて・・」
「私も・・」
 言葉が続かない。でも・・それは嫌な感じじゃなくって・・
 胸の奥が暖かくなるような不思議な時間・・

「ねえ・・護・・?」
「なんですか?」
「・・私・・今日の事、絶対に忘れない・・」
「僕だって忘れられないです。だって・・絢子さんが僕の・・こ、恋人に・・なってくれた日なんですから・・」
「え、ええ、そうね・・」
 まだ、『恋人』という言葉に慣れていなくて、思わず声が上擦る。
 
「私の事・・絢子って呼んでくれて・・すごく嬉しい・・」
「僕も嬉しいです・・こうして名前で呼んでいると、本当に絢子さんが僕の恋人になってくれたんだって実感できて・・」
「護・・」
 高鳴っていく胸・・
 こんなにも私は護の事が好き・・それが実感できて・・
 嬉しいような・・照れくさいような・・不思議な感じがする・・

 今までにないくらいに、何気ない会話が私の全てを包み込んでくれる気がして・・
 全てを委ねてしまいたくなる程に・・私は・・護を・・

 どれだけ話し込んでいたのだろう・・

 ふと気付くと、時計は3時を示していた。

「もう、こんな時間・・」
「ほんとだ・・すみません、長々と・・」
「何言ってるの。私だって楽しいのよ? それに・・出来るならこうしてずっと貴方の声を聞いていたい・・」
「絢子さん・・」
「でも・・もう寝ないとね。明日、また迎えに行くから・・」
「はい。あ、じゃあ、また朝食を一緒にどうですか?」
 また胸が高鳴る。
 護って、わざとやってるんじゃないかって思うくらい、いつも私がドキッとする事ばかり言うんだもの・・

「えっ・・でも、お母さまや逸美さんにご迷惑じゃないの?」
「絢子さんが一緒に食べていってくれるって言えば、2人とも喜びますよ」
「・・・じゃあ・・そう・・しましょうか?」
「はい! 伝えておきますね」
 嬉しそうな護の声・・
 私もすごく嬉しいんだけど・・なんとなく恥ずかしい・・

「ええ・・その・・護?」
「はい?」
「・・えっと・・その・・わ、私ね・・護の事・・大好きよ・・」
 口にしてから後悔した。
 なんて恥ずかしい事を言ってるのか・・口にして余計に思い知ったから・・
 でも・・

「僕も、絢子さんの事が大好きです。絢子さんを好きでいる気持ちなら、僕は誰にも負けません!」
「・・嬉しい・・護・・」
 多分、今目の前に護がいたなら、きっと私・・護に抱きついていたと思う・・
 それくらい嬉しくて・・
 ふと気付くと、頬に涙が流れていた。

「明日・・貴方に会える時が待ち遠しいわ・・」
「僕もです・・」
「・・それじゃ・・今日はもう寝ましょう・・」
「はい。それじゃあ、絢子さん。おやすみなさい」
「・・・ええ・・おやすみ、護・・」
 そう言って電話を切ろうとした時、ふと護が何かを呟いたような気がした。

「えっ? なにか言った?」
「い、いえ、そ、その・・お、おやすみなさい!」
「う、うん。おやすみ・・」
 慌てた感じの護に戸惑いながらも、受話器を置く。
 そのままベッドに入ろうとして、でもやっぱり気になる・・
 護がさっきなんて言ったのか・・

 受話器に残ったビアトリスの記憶・・
 そこからさっきのやりとりを読み取れば・・

『ええ・・おやすみ、護・・』
 私の声が聞こえてくる。そう、この後・・
『・・・愛してます・・絢子さん・・』
「!?」
 耳を疑った。
 あまりに突然だったから・・

 胸は早鐘のように高鳴り、その音が耳まで届きそうになっている。

「・・・も、もう一度・・」
『・・愛してます・・絢子さん・・』
 何度も・・何度も繰り返す・・
 ビアトリスの記憶を読み取るたびに、護の声が想いを告げて・・

「愛してる・・」
 呟いてみると、『好き』なんて言葉よりもずっと強い想いが胸の奥から湧き上がってくる。
「私も・・私も・・・っ!」
 溢れる・・想いが・・涙が・・
 護の激しい程の想いに触れて・・張り裂けそうな程に胸が高鳴る・・
「愛してる・・愛してるわ・・護っ!!」
 
 私1人しかいないこの部屋の中で・・
 高鳴る胸の鼓動と溢れる想いを胸に抱いて、私はゆっくりと瞼を閉じた・・



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