DADDY FACE SS
『雪人の成長日記』
by Sin
「くっそ〜っ、また虎雄さんに負けた〜っ!」
最近、虎雄との差が開く一方で、焦りを感じ始めた雪人。
先日も、彼と組んでのトレジャーハントで、3度も危機を救われてしまった。
元々の差は、修行の年月が違う分だけ、仕方ないとも思える。
だが、その差が日増しに広がっていくのは、才能の差……。
雪人はそう思って、無性に悔しくなった。
「父さん、いるか?」
そう言って鷲士の部屋に入った雪人だったが、そこには誰もいなかった。
「おかしいな……今日は出かける予定無かったはずだけど……ん?」
ふと見ると、机の上に一冊の分厚い古びたノートがあった。
「なんだ、これ? えっと…『<雪人>成長日記』〜っ!?」
そこには、確かに母、美貴の文字でそう書かれていた。
「こ、これ……母さんが……!?」
思わず顔が熱くなる。
いつもわがまま言い放題で、鷲士のことになると目の色が変わって、まるで子供みたいな所ばかりの人だから、こんな日記を付けているなど、雪人には全くの予想外だった。
「へぇ……母さんが俺の成長日記なんてつけててくれたんだな……」
照れくさくなった雪人だが、なんとなく嬉しくなって、ゆっくりとページを開いた。
○○○○年××月△×日
今日、3人目の子供が産まれた。
とっても可愛い男の子。今度の子はしゅーくん似みたい。樫緒も美沙も私似だったから、嬉しい。そう言えば、今、雪が降ってるみたい。しかもこの病院の周り、半径5qだけ……異常気象って天気予報で騒いでると、さっき美沙が教えてくれた。
しゅーくんと相談して、この子の名前は『雪人』って決めた。
だって、この子が産まれたのを祝福してくれるみたいに雪が降ってるんだもん。
「い、異常気象……俺が産まれたときにそんなことが……」
思わず汗ジトになる雪人。
とりあえず、めげずに読み進める。
○○○○年××月△○日
今日は、ノイエとルイーゼが雪人に会いに来てくれた。
2人とも、雪人のこと何度も抱きしめたりして……雪人、壊れないかな?
帰り際、2人が雪人のほっぺにキスしていった。
雪人はずっと眠ったままだったから知らないだろうけど……。
大きくなったらその時の写真見せてあげよっと。
書かれたメッセージの下に貼り付けられた写真。
そこには、寝かされた赤ん坊の頬に、今とそれほど変わらないノイエと、かなり幼い感じのルイーゼがキスをしている様子が写し出されていた。
「こ、これ、俺か!? だぁぁぁっ、こんな写真残すなよ〜っ!! つ、次っ!」
真っ赤になった顔で慌ててページを捲る雪人。
だが、その後数十ページに渡って、美貴や美沙、それに冴葉や単衣達、FTIのスタッフに抱きしめられたり頬にキスされている写真が大量に納められていた。
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
雪人にとっては、まさに知った顔ばかり。
その人達にこうして抱きしめられてキスされている写真を見せられることは、雪人にとって死ぬほど恥ずかしいことだった。
そしてその時……
「わぁ……これ兄さん? かっわいい〜っ!」
その声に思わず振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべる美月の姿が……。
「見せて見せて!」
「お、おい、ちょっ……」
慌てて止めようとしたが、美月はスッと雪人の手をかわして日記を取り上げてしまった。
「可愛い…それにしても兄さんモテモテね。こんなに沢山の女の人にキスされて……」
「んなこと言われてもなぁ………」
そうして順番にページを捲っていった美月だったが、一つのページで手が止まった。
「ん? どうした?」
「…これ……ドーラ? ううん……ノイエさん?」
「みたいだな」
「………これ、借りるわね」
「え?」
その言葉に雪人が振り返ったとき、すでに美月の姿はなかった。
そしてそれから数日。
件の写真は、美沙や美緒を初めとする家族、ドーラ達、雪人の周囲にいる女性達へと、
尽く広まっていたのだった。
「雪人〜っ、後でこっちもお願いね〜」
「な、なんで俺が・・」
「ふ〜ん、そんな事言うんだぁ? これ、焼き増しして学校中に配ったら・・・」
「喜んでやらせて頂きます!」
「あ、そ? じゃあ、お願いね〜」
笑顔でそう言い残す美沙の背中を恨みを込めた視線で見送る。
「・・くそ〜〜〜〜っ!! 俺がなんでこんな目にぃぃぃぃっ!!」
全ては・・あのアルバムの所為・・
「あんな写真取り溜めるなんて・・・母さん・・俺に何か恨みでもあるのかよぉぉぉっ!!」
散々女性達に好きなように使われる雪人の叫びが、虚しく響くだけだった・・
あのアルバムが冴葉によって一冊の写真集としてFTI女性スタッフ全員に販売されたことは、言うまでもない。