DADDY FACE SS 『雪人の悩み(4)』
by Sin
美沙が雪人の部屋を出てしばらくの後、雪人は赤い光線に追い回されていた。
その背後には、光線によって切り裂かれた無惨な跡が広がっている。
「はぁはぁ・・一体何がどうなってるんだよ・・・ドーラはいきなり怒り出すし・・さっきはさっきで
追い回されるし・・」
そう言って身を隠す雪人。
「さっきのって・・・姉貴の草薙じゃないのか・・・? なんで姉貴が・・」
だが、一息ついたその時。突然背後に人影が現れた。
「見つけたわよ、兄さん」
声で誰だか解った雪人は、安心して座り込んだのだが・・
「美月かぁ・・・。ちょっと俺今立て込んでるから、用事なら後な」
「いいえ、今よ」
そう言うと美月はいきなり銃を抜いた。
「なっ、美月、お前もか!?」
「覚悟・・・っ」
続けざまに銃声が辺りに響き渡る。
しかし雪人はその全てを受け止め、弾いていた。
「お、お、お前は俺を殺す気かっ!!」
息を切らしながらもそう言う雪人に美月は再び銃を向ける。
「そうよ・・・女の子の気持ちを踏みにじるような兄さんなんて・・死んでしまいなさい・・」
恐ろしく冷静にそう言うと、美月は再び銃撃を始めた。
連続して繰り出される結城の力を込めた弾丸を必死に弾きながら逃げ回る雪人。
だが、逃げるばかりではいくら九頭竜と言えど、限度がある。
必死に逃げ回っていたが、とうとう壁際に追いつめられた。
「み、美月っ! と、とにかく話を・・・」
「・・・兄さん・・・安心して・・・姉さんや美緒達には手を出させないから・・私の手で始末して
あげる・・・」
その言葉と共に空のマガジンが地面に転がり、間をおかずに懐から取り出した新たなマガジンをリロード
する。
だが、そのわずかな隙をついて、雪人は美月の懐まで潜り込んだ。
「くっ!?」
慌てて間合いを取ろうとする美月だが体術においては雪人に叶うはずもなく、美月が引き金を引くよりも早く雪人の右竜翔扇が美月の銃を弾いた。
「きゃっ!」
身体に直撃はしなかったものの、銃を弾かれた衝撃で右手はしばらく使い物にはなりそうもない。
痛みと悔しさで一杯になった美月は涙目で雪人を睨む。
「取りあえず話を聞けよ。一体何があって俺を狙うんだ? さっきは草薙からみたいなレーザーにも追い回されるし・・あれ、姉貴だろ?」
そう言った雪人をしばらくの間睨みつけていた美月だったが、やがてぽつりと呟いた。
「・・・くせに・・」
「え?」
「ドーラの事、泣かしたくせに!!」
涙目でそう言う美月に雪人は焦った。
「お、おい、ちょっと待て! 確かにドーラの事怒らしちまったのは間違いないけど、なんでそれで美月や
姉貴に狙われないといけないんだ!?」
「兄さんが、ドーラにあんな酷い事したからでしょ!!」
「酷い・・事?」
訳が解らず聞き返した雪人の様子に更に怒りを増大させたのか、美月は左手で銃を抜こうとしていた。
「お、おい、待てって!! 俺が、一体どんな酷い事したって言うんだよ!!」
「自分の胸に聞いて!!」
「胸にったって・・・」
戸惑った雪人が考え込もうとしたその時。
「くっらえーーーっ!!」
突然頭上から響いてきた声に、雪人は即座に反応した。
いらぬ事を言って殴られ慣れているだけあってその反応は早い。
目の前にいる美月を抱きかかえると、そのまま全速力でその場を逃げ出した。
そしてふと背後の気配を探る。
と、その瞬間、とてつもない衝撃に、美月共々弾き飛ばされた。
「う、うわあああああああああっ!!」
「きゃあああああああああああああっ!!」
激しい衝撃と、飛び散ってくる瓦礫を何とか避けて、美月をかばいながら何とか着地。
辺りの粉塵が晴れる前に身を隠した。
「よっし。お姉ちゃんとの約束通り、『見つけたら即、天地竜杞憂』オッケーっ! ・・って、あれ、
いない?」
キョロキョロと辺りを見回すが、どこに隠れたものやら、一向に見つからない。
「しょ〜がない。また探そっ」
そう言うと美緒は、今の一撃で辺りをとことんぶち壊しながらもあっけらかんとした様子で再び雪人を
捜しに飛び去った。
「い、行ったみたいだな・・・もう一回あれ食らってたら、やばかった・・」
そう言って雪人は瓦礫を掻き分けながら立ち上がる。
その下には人一人分の空洞ができていて、そこには美月がうずくまっていた。
埃を払いながら立ち上がろうとする美月に雪人はそっと手を貸す。
「大丈夫か、美月?」
雪人の言葉に、美月は黙ったままうつむいていたが、やがて・・・
「・・・なんで・・・」
「え?」
「なんでかばうのよ! 私、さっきまで兄さんを狙っていたのよ! こんな風に!」
銃を突きつけてそう言う美月の頭を雪人はポンポンッと叩いた。
「当たり前の事だろ・・・妹の事守るなんて・・・」
雪人に微笑みながらそう言われて、涙ぐみながら美月は銃を下ろした。
「・・・・バカ・・そんな事言われたら・・これ以上・・できないじゃない・・・」
「え?」
「なんで・・こんな風に優しくできるのに・・ドーラにあんな酷い事・・」
「だ、だから、俺が一体何をしたって・・・」
どうしても解らない雪人の様子に、先程までの怒りも収まったのか、美月は溜息をつくと説明を始めた。
「・・・兄さん、昨日がドーラの誕生日だって事くらい知ってるわよね?」
「えっ・・そうだったのか・・・?」
キョトンとしている雪人。その様子に再び美月は溜息。
「前に一度誕生日パーティしたでしょ!」
「あ、ああ、あれか! あの時、ドーラの誕生日だったんだな・・・」
「兄さん・・その位覚えておいてよ・・・」
そう言う美月の肩が落ちる。
溜息もさっきより大きくなった。
「それで・・怒ったのか?」
「勿論それもだけど・・・兄さん、昨日ドーラの事食事に誘ったわよね?」
「ああ。前に約束してた一緒に食事ってのを、ちょうど思い出したから忘れないうちにと思って・・・」
「あの時、ドーラはてっきり誕生日に2人きりで・・って・・そう思ったんだからね・・」
「う・・・」
さすがにその言葉には堪えたのか、雪人がわずかに後ずさる。
「それに・・・ここからが一番の問題よ!」
「えっ・・・」
「誕生日を忘れただけじゃなく・・その後、一緒に食事するはずだったのに、兄さん絡まれてる女の子を
助けて、そのままその子を送るってドーラの事置いて帰ったわよね・・・?」
「ちょ、ちょっと待て! た、確かにその子を送ったけど・・その後、ちゃんと戻ったぞ! だけどもうドーラはいなくて・・・」
慌てて否定する雪人だったが、逆に美月に一括された。
「当たり前でしょ! どこの世界に女の子を一人きりで3時間以上も待たせるのよ!! それでもドーラ、
3時間までは待ってたんだからね!!」
「う・・・」
「それなのに・・・どこで何してたのか知らないけど、そんなドーラを泣かせたんだよ!! 私じゃなくてもその話聞いたら怒るの当たり前じゃない!!」
美月の言葉にぐぅの音も出ない雪人。
「謝ってよ・・・」
「あ、う、うん・・・」
「約束してよ! ちゃんとドーラに謝るって!! じゃなきゃ・・・ドーラが可愛そう・・」
「わ、解った・・ちゃんと謝りに行くから・・・」
「・・・その後で、舞ちゃんにも謝っといた方がいいかもね・・・かなり怒ってたらしいから・・」
「あ、ああ」
「じゃあ・・私、帰るから・・。あ、早い内にドーラに謝らないと、姉さんと美緒がまたいつ来るか解らないわよ。それと・・・」
「え?」
「・・さっきは・・ありがと・・・守ってくれて・・・兄さん・・」
そう言うと、美月は怒っているような照れているような不思議な表情をしてその場を立ち去った。
後に残された雪人は大きく溜息をつくと、辺りの気配を探りながら、ドーラの家へと向かって走り出した。
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