DADDY FACE SS 『クリスマス・プレゼント』
by Sin
クリスマス・イブを数日後に控えたある日のこと・・
美沙、美月、美緒はクリスマスの買い物の為、商店街に来ていた。
1人でも人目を引きつけるこの3人が一緒にいると、その効果も3倍・・いや、相乗効果で10倍ほどになっている。
幾度もナンパされ、断り続けて1時間。
真剣に申し込んでくる相手にはそれなりに対応するが、強引な相手には、こちらも力ずくでお断りした。
「はぁ〜、久しぶりに来てみたけど・・やっぱり疲れるわね・・」
そう言って持った袋を振り回す美沙。
しばらくそうやって振り回していたが、危ないわよ、姉さん。と美月に言われて、渋々止めた。
「さっき声をかけてきたのって、何人目だっけ?」
「28組目。全部で57人よ。ホント、嫌になるわ。兄さん連れてきたら良かったかしら」
美緒の問いにすぐさま答える美月。
「数えてたの?」
暇人が何人いるのかと思って・・と言う美月に、美沙は苦笑。
それからまたしばらく美沙達は商店街を歩き回り、何人かのナンパ男達を退けて、いくつかの買い物を済ませた。
先程まで明るかった空も、すっかり暗くなっている。
「さてと・・このくらいでいいかな・・美月、美緒、買い忘れた物とかない?」
「私は大丈夫。それより・・美緒。その大荷物、あんまり軽々と持って歩かないで。人目引きすぎて恥ずかしいわ」
「でも、ゼイゼイ言いながら持って歩くのもかっこわるいじゃない?」
にっこり笑って言う美緒に、美月は溜息をついて、もういいわ・・と答えた。
「美月、今年のクリスマスは、どうするの?」
「私は麟太郎くんとラブラブ〜♪」
美緒は聞かなくてもわかってるって・・と言って苦笑する美沙。
「え〜、なんで〜」
「あんたの答えはいつも決まってるでしょうが」
ベシッと美緒の額になにかが直撃する。
いきなりの衝撃に仰け反った美緒が見た物は、巨大な手だった。
「な、なに、これ?」
美月も驚きを隠せない様子で、マジマジと見つめている。
「突っ込みくん・グレート。このあいだ、冴葉が新しく作ったから使ってみて・・って」
「・・・冴葉さんの趣味?」
「多分ね」
苦笑しながら答えた美沙に、美月と美緒は額にでっかい汗を浮かべた。
「・・私、時々冴葉さんが分からなくなる・・」
「私も」
「ああ、大丈夫。私だってわかんなくなるときあるもん」
美沙の答えに笑うしかない2人。
と言うより、それ一体どこから出した? という疑問はおいといて・・・
「で、結局どうするつもりなの、美月は?」
「多分、部屋でのんびりしてるわ。父さん達はきっとまた2人でディナーでしょうし」
「寂しいクリスマスねぇ・・一緒に過ごす相手くらいそろそろ作ったら? あんたにしょっちゅうアプローチかけてくるヤツだっているわけだし」
「冗談でしょ・・なんであんなのと・・」
本気で嫌そうな顔をした美月。どこか遠くから、どうせ・・どうせ俺なんて・・という声が聞こえた気がしたが、美月は完全に無視した。
「じゃあ・・幽は?」
美緒がそう言った瞬間、美月の動きが止まった。手に提げた袋を落としたことにも気付いていない。
「あれ、どしたの?」
「・・どうやら、ずいぶん近くに本命がいるみたいね。なんなら、この機会にものにしちゃえば?」
美沙の言葉に更に耳まで真っ赤になる美月。
なんとかごまかそうとするが、逆にドツボにはまってしまう。
その時、あううぅ・・と頭を抱えた美月を見て、美緒が何かを企んだような顔をしたのだが、その事に2人とも気付いてはいなかった。
そして・・・時は流れて、クリスマス・イブの夜・・
部屋でのんびり物思いにふけっていた美月は、ふと、なにかの物音に気付いて、窓の外を覗いた。
すると・・そこには・・・
「・・・なに、あれ・・?」
巨大な麻袋・・・そしてグルグル巻きに巻き付けられたリボン。
そしてそのリボンには、メリークリスマスと書かれたカードが一枚刺さっていた。
「・・・クリスマス・・プレゼント・・?」
訳が分からず、とりあえず近づいてみる美月。
つついてみる・・反応はない。
撃ってみる・・・びくん・・と動いた。
更に2発・・・突然麻袋が立ち上がり、美月に向かって突進してきた。
・・と、同時に美月はSMGに持ち替え、全弾撃ち尽くすまで撃ちまくる。
「美月〜〜〜〜〜っ、俺を受け取ってくれ〜〜〜っ」
その声と共に、美月は更にグレネードランチャーに持ち替えて・・・
「・・・発射」
ちゅどぉぉぉぉぉん・・という派手な音と共に、麻袋の主は、夜空に消えていった。
「ふぅ・・」
一仕事終えたようなすっきりした表情で部屋に戻ろうとする美月。
するとそこには・・
今度は綺麗にラッピングされた、2メートルほどの大きさの箱が置いてあった。
「次は・・誰?」
そう言いつつ、銃を構える。
だが、次の瞬間、カードに書かれた文字に、思わず手が止まった。
『この箱、開けないと絶対後悔するよ〜〜メリークリスマス。by 美緒』
「・・・・ま、まあ・・いいわ・・とりあえず・・開けるだけ・・なら・・」
冷や汗混じりにそう言うと、美月は恐る恐るリボンを解き、箱を開けた。
するとそこには・・・猿ぐつわをされ、全身をピンクのリボンでグルグル巻きにされた幽の姿が・・
「ゆ、幽!? な、なんで・・」
慌てて猿ぐつわを外し、リボンを解いていこうとするが・・その時、リボンに括られたカードの存在に気付いた。
「・・・? えっと・・『これ、好きにしちゃっていいからね〜。メリークリスマス♪ 姉思いの妹より』!?」
思わずカードと目の前の幽を見比べてしまう。
「あ、あの・・えっと・・・ゆ、幽・・大丈夫?」
「・・ここ・・は? あれ・・? 美月・・さん?」
ようやく気が付いたのか、幽はぼーっとした目で美月を見つめている。
「なにが・・?」
「・・・いきなり、冴葉さんになんだかやけに強い薬をうたれて・・気が付いたら・・ここに・・」
そう言われて、美月は頭を抱えた。
「おかしいなぁ・・こんなに簡単に薬にやられるはずないんですけど・・一体何をうたれたんでしょう・・?」
「幽・・?」
「ん?」
「これ・・・」
そっと美緒からのカードを差し出す美月。その顔は真っ赤だ。
やがてカードの内容を把握した幽は、大きく溜息をつく。
「こういう事ですか・・・」
「プレゼント・・なの?」
ポリポリと頬を掻いて苦笑いを浮かべる幽に、美月は耳まで真っ赤になって訪ねた。
「みたいですね・・」
「・・・とりあえず・・一緒に・・飲む?」
そう言ってワインとグラスを差し出す美月に、幽は微笑んで頷くとグラスを受け取る。
のんびりとした空気の流れる空間・・・
程よく酔いが回ってきた頃・・不意に美月が口を開いた。
「・・・幽・・」
「はい?」
「・・・好き」
「え?」
何を言われたのかとっさに分からなくて聞き返した幽だったが、すでに美月は幽の肩に身体を預けて、眠ってしまっていた。
「美月・・さん?」
呼びかけてみても起きる気配はない。
しばらくの間、その寝顔を見つめていた幽だったが、やがて美月に肩を貸したまま、目を閉じた。
「・・・僕も・・貴方のことが好きです・・美月さん・・」
いつしか眠りに落ちた幽。ただ・・その一言を残して・・・
翌日・・
「ふわ・・ぁ・・あ? ゆ、ゆ、幽ッ!?」
「ん・・・? ああ・・おはよう、美月さん」
「あ、あの、あのえっと・・・お、おはよう・・」
微笑んで挨拶されて、更にパニックになった美月。
そうしている内に、段々昨日のことが思い出されてきた。
「え、えっと・・あの後・・そのまま?」
「よく寝ていたので、起こしませんでした」
「・・・寝顔・・見た?」
真っ赤になって聞いてくる美月に幽は微笑んで可愛かったですよ・・と答えた。
と、同時に美月の顔がこれまで以上に赤くなる。
視線を合わせづらくて、あちこち彷徨わせていたが、やがて幽と目を合わせると、照れくさげに微笑んだ。
「・・初めて・・親兄弟以外の男の人と・・イブを・・過ごせたわ・・ありがと・・幽・・」
「僕も楽しかったですよ。今回ばかりは、美緒さんに感謝ですね」
「そうね・・今回だけ・・はね」
そう言って笑い合う2人。
部屋の中を、和やかな雰囲気が包んだその時だった。
「おはよ〜、姉さま〜」
唐突に扉が開き、部屋の中に美花が神威を伴って入ってきた。
「み、美花!?」
「美花さん!?」
「あ、あ〜〜〜〜っ! 幽くん、なんでいるの〜〜〜!?」
驚き慌てる美月と幽。美花もぽかんとその様子を見つめていたが、やがて・・・
「そっかぁ、姉さま、昨日は幽くんと一緒にクリスマスしたんだぁ。そっかそっかぁ〜」
なにやらやけに楽しげな美花に、美月は慌てて、そ、そんなんじゃ・・と言ったが、どうやら全く聞こえていないらしく、幽くんと美月姉さま、ラブラブ〜と、神威を抱きあげて歌いながら部屋を出て行ってしまった。
「ちょ、ちょっと美花〜待ちなさい〜っ!」
はたと気付いて止めるがすでに遅く・・
数分後には、家族全員が知るところとなっていた。
興味津々でからかってくる家族達の様子に・・
「なんでいつもこうなるのよ〜〜〜〜〜っ!!」
美月の叫びが、(いつもの如く)草刈家の中に響き渡るのだった・・
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