DADDY FACE SS 『不死咎人(9)』
by Sin
青い閃光があちこちで瞬き、化け物達を砕く。
しかし、何度砕いても、すぐに再生してしまっていた。
「全く・・キリの無い・・」
「やっぱり、なんとか本体を見つけて、それを倒さないと・・」
苛立つ樫緒だったが、鷲士のその言葉に静かに目を閉じた。
「樫緒・・くん?」
「ならば、引きずり出すまで! こそこそ隠れるのも、これで終わりです!」
その瞬間、地面が一面青く輝き、やがて地響きと共に何か巨大な物が上がってきた。
「わ、わ、わ、な、なに!?」
慌てる一同の目の前に赤い染みが湧いてくると、それはどんどん大きく広がり、巨大な池となった。
大きさは、ゆうに20メートルを超えている。
「これが・・・こいつらの本体・・!?」
恐る恐る美沙が近づこうとしたその時だった。
− アノトキ・・ノ・・・オンナ・・・ダ・・
「ひっ!?」
突然聞こえてきた声に、美沙は真っ青になって虎雄に抱きつく。
直ぐさま鷲士と樫緒がその前に出て2人を庇った。
美貴も、薙刀を構えて周囲を警戒している。
− スベテ・・オレノ・・モノダ・・オレノォォォォォ!
途切れ途切れに聞こえてきた声が、急に激しさを増す。
それと同時に赤い池が天を衝く勢いで一気に伸び上がった。
「美貴ちゃんと美沙ちゃんは虎雄くんを連れて早く離れて!!」
「し、師匠、俺は・・まだっ!!」
今にも頽れそうな身体を気力で支えて、虎雄は再び立ち上がろうとする。
「む、無茶よ、虎雄!」
「無理でもなんでも・・今、美沙を守れなくちゃ・・俺は・・っ!!」
支えようとする美沙を振り解き、虎雄は再び化け物へと向かっていく。
「虎雄ーーっ!!」
美沙の叫びに、逆に後押しされるかのように、飛びかかった虎雄の閃刀が化け物の身体を引き裂いた。
だが、その傷もすぐに塞がってしまう。
− ククク・・ヒャハハハハハ・・・オレハ・・オレハ・・モウダレニモジャマサレナイ・・オレヲトメラレルヤツハ・・イナイ・・スベテノオンナハ・・・オレノモノダ・・・クク・・ヒャハ・・ヒャハハハハハハハハ!
化け物の狂笑が響き渡る。
− ドンナオンナモ・・オモイドオリ・・
化け物がそう言った瞬間、化け物から無数の触手のような物が延びて、その先端が、被害者の女性達の姿へと変わる。
− ナケ・・・ナケェ・・ヒャハハハ・・コウフンスルゼェ! オンナドモノサケビハヨォォォッ!!
悲鳴・・なんてレベルじゃなかった・・
まるで魂を引き裂かれるような絶叫。
赤いゼリー状の瞳から溢れ出す、それよりも赤い血の涙・・
哀しみ・・怒り・・絶望・・狂気・・
「い、嫌あああああああああああっ!!」
美沙が耳を塞いで蹲る。
「もう、もうやめてぇっ!! こんなの・・こんなのっ!!」
泣き叫ぶ美沙を美貴が強く抱きしめて、化け物を睨み付けた。
− ヒャハハ・・ヒャァッハハハハハハ!! コワイカ! カナシイカ! オマエモスグニオナジメニアウッテノニヨォォッ!
伸び上がった化け物の先端が、巨大な人の顔になって、震える美沙を笑う。
触手がその周りを囲み、その先にいる少女達の絶叫が更に大きく響いて、美沙は喉が裂けんばかりの悲鳴を上げた。
その時だ・・
「・・・もう、黙れ・・」
低く・・何かを押し殺すかのように響く声。
あまりのその迫力に、静まりかえる一帯。
「・・いい加減にしろ・・こんなこと・・」
一閃・・
音もなく光が瞬いた瞬間、化け物の触手が一斉に寸断された。
「なっ・・・」
突然の展開に、樫緒も呆然とその様子を見つめる。
「・・・美沙をこんなに悲しませやがって・・簡単に死ねると思うなよッ!!」
満身創痍・・そう言ってもおかしくない程に衰弱している虎雄の身体のどこにこれほどの力が秘められていたのか・・
誰もがそう思うほど、立ち上る闘気は凄まじく、その闘気の放つ一閃で、触手は全て粉々に砕け散った。
その先端にあった女性達の姿も全て砕け散る。
− バカメ・・ナンドクダイテモ・・・? バ・・カナ・・オレノ・・オレノオンナガ・・キエタ・・?
虎雄の一撃を受けた女性達は、今までの再生能力が嘘のように、完全に消えてしまっていた。
辺りにはもう絶叫はなく、砕け散った女性達の破片が、キラキラと舞い落ちる。
− ナゼダ・・・ナゼ・・・・マア・・イイ・・オンナハマタアツメレバ・・イイオンナモ・・メノマエニイルカラナァ・・・
再び生えてくる触手。
だが、次の瞬間、それらは全て砕け散った。
辺りに煌めく青い光。それは不可視の力の証・・・
一瞬で虎雄の横に並んだ樫緒の瞳に、激しい怒りの炎が浮かんでいた。
「・・・虎雄・・僕は君を認めるつもりはない・・だが・・こんな輩に姉さまを傷つけられるよりは・・虎雄の側で笑っている姉さまを見ている方が、百倍マシだ!」
次々に青い光が化け物の身体を切り裂き、引き裂き、打ち砕く。
それに伴うように、虎雄の闘気が化け物の身体を貫いた。
瞬く間に化け物は全体の半分を吹き飛ばされる。
だが、それはすぐに再生してしまった。
続けざまに鷲士も加わって徹底的に砕く。だが・・・
「まったく・・呆れた不死身ぶりですね・・」
「くっ・・こんな奴、1秒だって生かしておきたくないってのに!!」
何度打ち砕いても、引き裂いても、すぐに再生してしまうあまりの化け物ぶりに、2人の表情に若干の焦りが見え始める。
だが、鷲士は僅かながら、この状況に光明を見いだしかけていた。
「さっきから見てて思ったんだけど・・もしかしたら、あの化け物って大きく再生する時にほんの僅かな間だけど、硬質化するんじゃないかな? そのタイミングで攻撃が当たった所は、ほら、まだ治ってない」
鷲士の言葉に、2人もその場所を確かめる。
「た、確かに・・まだ治っていない場所がありますね・・」
「・・・狙うなら・・そのタイミングってわけですね、師匠」
「うん、確実かは解らないけど、やってみるだけの価値はあると思う」
3人が頷き合った、その時・・
「虎雄! 鷲士くん! 樫緒! 3人とも離れて!!」
突然背後からかかった声に、虎雄と鷲士は直ぐさまその場から飛び退き、樫緒は瞬間移動で美貴の隣に姿を現した。
「いっっけぇぇぇぇぇっ! 草薙、最大出力!! 発射ぁぁぁぁぁぁっ!!」
美沙の声と共に、音もなく赤い光が化け物を捉える
なにかが蒸発するかのような鈍い音と共に、化け物の身体がボコボコと泡立つ。
− ヒャハハハハ! キカネェ・・キカネェヨォ!
狂ったように笑う化け物の視線が美沙を捉える。
そして次の瞬間・・・
− コレデ・・オマエモオレノモノダァァァァッ!!
慌てて振り返った鷲士達の目の前で、美沙の足下から数本の触手が突き出された・・・。
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