斬魔大聖デモンベイン SS 『悠久よりも今を』
by Sin



「・・う・・ん・・ふぁ・・・」
 なんとなく頭がぼーっとする。
 昨日、遅くまで九郎と愛を交わし合っていたからな・・

 今、妾は九郎の腕の中にいる。
 どちらもなにも身に着けてはいないから・・少し恥ずかしいのだが・・それもまた・・心地良い・・

「九郎・・妾は・・汝の事を誰よりも・・」

 温もりを求めて、九郎の胸に縋った。
 
「誰よりも・・愛しく思う・・」

 九郎の鼓動が、触れ合う肌を通して伝わってくる。
 
 汝と出逢うまで、妾はこれほどの喜びがある事を知らなかった・・
 汝と離れてしまったあの時、妾は・・初めて失う事を恐れたのだ・・

 妾は・・泣いた。すでに力を失って漂うだけのデモンベインの中で・・
 泣いた・・泣き続けた・・九郎と二度と会えないかもしれない・・
 そんな事は・・耐えられなかった・・

 永劫とも思える時が過ぎ・・
 汝を求める余り、気も狂いかけた頃・・
 妾は汝と・・再会した・・

 その瞬間、妾は思い知らされたのだ・・
 ・・もう・・九郎無しでは生きていけぬようになっていることを・・

「九郎・・九郎・・っ・・」

 ・・触れ合う肌に、お互いの温もりが伝わり合う。
 
「あ・・・っ・・」

 唐突に、妾の身体は九郎の腕に抱き寄せられていた。

「な、汝、起きておったのか?」
 今までの様子に気付かれていたのだろうか?
 そう思うだけで、妾は頬が火照るのを感じていた。

「ん・・今、起きた・・」
 そう言って九郎は妾の唇を奪う。

「ん・・ぅっ・・九郎・・」
「ふぅ・・ごちそーさん。それと・・おはよう、アル」
「なっ、汝はぁっ! んっ!? んぅぅ〜〜〜っ!!」
 恥ずかしさのあまり、怒って見せたが・・逆効果だったらしい。
 九郎は妾の口を塞ぐように、激しく唇を奪ってくる。

「はっ・・はぁ・・っ・・く、九郎〜〜〜〜っ!」
 ようやくの事で解放された妾は、あまりの息苦しさに、涙目になってしまった。
「な、汝は、妾を殺す気か〜〜っ!!」
 妾がそう言った途端、九郎はいきなり妾の身体を強く抱きしめ、優しすぎるほどに優しく、そっと手を這わせてくる。
「あ・・・・っ・・」
 思わず息が零れる・・
 許奴には・・恥ずかしいと思う気持ちはないのか・・?
 妾は・・此程までに・・羞恥に震えているというのに・・

 そう思って、九郎の顔を見た時・・

「・・・ぷっ・・な、汝っ! なんて顔をしておるのだ!? く・・くくくく・・・っ」
「・・笑うな・・」
「な、汝が笑わせておるのではないか・・くくく・・っ・・そ、その顔・・」
「ほっとけ・・」
 ふてくされた表情でそっぽを向く九郎。
 だが、その顔はさっきまでの名残で、まだ赤い。
 なにしろ・・つい今し方まで、耳や首筋まで赤くなっていたのだからな。

「ま、まるで、初な女の様に潤んだ瞳だったぞ、汝は」
「・・・・っ」
「ん? なんだ?」
 さっきまでの恥ずかしさから、妾は余計に九郎をからかう。
 だが・・それを黙っている様な九郎ではなかったのだ・・

「・・・アル、覚悟決めろよ」
「・・なっ?」
 戸惑った妾が顔を上げた瞬間、妾は唇を・・そして全てを九郎に奪われる。
「く、九郎!? 汝、なにを・・!?」
「休む暇なんて・・やらねぇからな」
 その言葉が、始まりだった。

 強く、優しく・・
 激しく、穏やかに・・

 奪われる。

 心が・・身体が・・全てが九郎の色に染められていく。

 抵抗・・拒絶・・逃避・・考えられない。

 享受する・・大十字九郎という存在を・・
 妾の・・魔導書『アル・アジフ』の主として・・享受する・・
 妾の・・1人の女『アル・アジフ』の君として・・享受する・・

 妾が求める・・唯1人の・・男として・・

 − 享受する −


「九郎・・・九郎、九郎・・っ・・」

 求める。九郎の存在を・・
 求める。その温もりを・・
 求める。その快楽を・・

 − 汝の全てを求める −

「妾は・・九郎・・汝が・・汝の全てが・・欲しい!」


 縋り付く。
 恋われるほどに。壊れるほどに。
 貪るが如く。貪り尽くさんとするが如く。
 
 受け入れ、求め、それでもなお奪おうとする。
 幾十、幾百の逢瀬を重ねただろう・・

 疲れ、火照った身体を横たえて見上げた部屋の中は、すっかり薄暗くなっていた。

 もはや、指一本動かす気力もない。

 文字通り、精根尽き果てた。

 妾の横で九郎もだらしなくその身体を晒し、虚ろな視線を妾に注いでいる。

「・・・・九郎・・」
 自分でも驚くほどの掠れた声。
 動かぬ身体を無理に動かし、九郎の胸に縋り付く。

 頬を九郎の胸に当て、その温もりを受け止める。
 妾の髪を、九郎が優しく撫でる。それが・・何とも心地良い。
 
 九郎と出逢う前の千年以上の月日・・・
 そして・・再会までの幾千、幾億の月日・・

 その悠久の時の中にありながら・・妾にとって、本当に生きていると実感できた今・・
 
「九郎・・妾の全ては・・汝の物だ・・・」
「アル・・俺の全てだって・・お前の物なんだぜ・・」

 妾と九郎の姿は、ゆっくりと闇に閉ざされていく部屋の中、また1つになった・・
 





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