斬魔大聖デモンベイン SS 『恐怖を癒す優しき鼓動』
by Sin



「う・・・ん? ここは・・」
 ふと目を開けると、見覚えのある風景だった・・
 火花を散らす機器が俺の周りを取り囲んでいる。

「デモン・・ベイン? そうだ・・ここは・・」
 辺りを見回した瞬間、俺の脳裏にあの瞬間が蘇ってきた。

 大導師マスターテリオンがアンチクロスによって殺された後・・
 俺は・・

『それでは、さようならだ』

 輝く金色の鬼械神・・その砲口から溢れる光・・
 俺達は・・

 叫んだ。声の限りに。
 ブラック・ロッジ・・アンチクロス・・
 まだ、断たなければいけない奴等が残っている。

 今、魔を断つ剣が・・折れるわけにはいかない・・だが・・

 光に包まれたコクピットの中で、俺は意識を失った。
 あの瞬間、誰かの声を聞いた気がしたんだが・・

「う・・くそ・・どこだ・・ここ・・?」

 壊れたハッチから覗く光景には見覚えがあった。

「格納庫か・・? それにしても、どうしてここに・・・」

 ふと、以前にもどこかでこの風景を見たことがある気がした。

「・・・まさか・・まさか・・そんな・・・」

 見た覚えがあるはずだ。
 俺は確かにあの時アンチクロスに負けて、その後この場所にいた。
 そう・・一番見たくない物を見てしまった・・あの時だ・・

「あ・・ああ・・・・」

 身体が震える。
 腕の中に感じる温もり。いや、少しずつ失われていくそれに視線を落とす。

「・・嘘・・だ・・・」

 腕の中で、銀色の髪が血に染まっていた・・
 
 抉られた背中・・
 溢れる真っ赤な血の海・・

「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・」

 そこには・・あの時と同じように血に染まったアルの姿があった・・

「アル・・嘘だろ・・? こんな・・こんな事・・・あるはず無いだろ・・?」

 震える手で頬に触れようとした瞬間・・

 光と共に、アルの身体は魔道書のページとなって舞い上がった。

「駄目だ・・駄目だっ!!」

 必死にかき集めようとしたその時・・
 アルのページが・・燃え上がった・・

「い、嫌だ・・燃えるな・・・アルが・・アルが消えちま・・っ・・・」

 なんとか食い止めようとするが、火は全く治まらず・・
 俺の手の中には・・一欠片のページの燃えかすが残っただけだった・・

「・・・・ア・・ル・・? う・・あ・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『・・朗! くろ・・・う・・・九郎!』

 突然の声に、ハッと目を開ける。

「九郎! 九郎っ! しっかりしろ!!」

 頬をパシパシと叩かれて、ボンヤリとしていた周りの様子が、少しずつ見えてきた。

「妾が分かるか!? 九郎! しっかりするのだ!」
「ここは・・デモンベインは・・?」
 呆然と辺りを見回す。
 さっきまでの風景はどこにもなく、見覚えのありまくる、いつもの風景だ。

「汝が酷くうなされていたから・・心配したのだぞ・・」
 ふと、声の主を見つめる。

 そこには・・全く傷など負っていないアルのいつも通りの姿があった。

「ア・・・アル・・・」
「・・・どうしたのだ・・? 九郎・・」
「・・アル・・アルっ・・・アルーーーーっ!!」

 目の前で心配気にしていたアルを、俺はいきなり抱きしめる。

「な、なにを・・!? く、九郎・・汝・・泣いておるのか・・?」

「よかった・・よかった・・・っ・・」

 強く・・その温もりを確かめるようにしっかりとアルの身体を抱きしめた。

「九郎・・」

 その時、そっとアルの手が俺の背中に回された。

「悪夢を見たのだな・・心配はいらぬぞ。妾はちゃんとここに居る。汝を置いて、もう、どこにも行ったりはせぬ・・
だから恐れるな・・」

 アルの温もりが俺の凍えきった心を温めていく。
 伝わってくる胸の鼓動が、俺の凍り付いた魂を優しく溶かしてくれる。
 いつしか俺は、アルの胸に抱かれて落ち着きを取り戻していた。

「・・・アル・・」
「もう、大丈夫のようだな・・九郎・・」
「ああ・・アルのお陰だ・・」
 俺がそう言うと、アルは少し照れくさそうに頬を赤らめて俯く。

「汝が苦しんでいるなら・・妾はいつでも汝を支えよう・・汝が悲しんでいるならば・・妾はあらゆる喜びを汝に
与えよう・・九郎・・汝は妾にとって・・掛け替えのない、ただ1人の愛する君なのだから・・」

 宣言するように紡がれるアルの言葉・・

 その微笑みに俺が見とれていると、アルはそっと瞳を閉ざし・・

「九郎・・愛しているぞ・・」

 俺は、優しい温もりに唇を塞がれた・・・







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