斬魔大聖デモンベイン SS 『いつまでもそばに』
by Sin
アーカムシティーの外れにある大十字九郎探偵事務所。
今夜も、アルの語る俺達の冒険譚に目を輝かせて聞き入っていたリルだったが、夜も更けてくる頃には今にも眠ってしまいそうな様子でアルの胸に抱きつき、話の続きをせがんでいた。
「ママ……もっとお話聞かせて……」
「今夜はもう遅い。また明日も聞かせてや…あげるから、そろそろ……な」
「やだぁ………もっとママのお話聞きたい……」
「そう我が侭を言わず……」
「もっと……ママの……すぅ………すぅ……」
「ん? リル?」
唐突に言葉の途切れたリルを見ると、いつの間にかリルは寝息を立てて眠っている。
その様子に思わず顔を見合わせて苦笑する俺達。
「……九郎……」
「ん?」
「本当に……妾達にこうして子供が授かるなど……思っても見なかったな……」
「ああ、そうだな……」
アルの胸に抱かれて寝息を立てるリルの髪をそっと撫でてやると、くすぐったそうに首をすくめて微笑みを浮かべる。
「……妾は……本当に幸せだ……魔導書である妾を此程にまで愛し、包み込んでくれる主に出会えた事……これ以上の幸せなど、あり得ぬ……」
「俺もさ、アル。お前に出会えて、お前を愛して、そしてお前との子供まで産まれた。こんな幸せな事、他にあり得ないさ」
「九郎……妾は……」
涙を浮かべてその瞳を閉ざすアルに、そっと口付ける。
「ん……っ……」
幾度唇を重ねただろう……
気が付くと、あれから1時間ほど過ぎていた。
「……のう……九郎……」
「ん、なんだ?」
「……その…最近……抱いては……くれぬのだな……」
顔を真っ赤に染めてそう呟くアル。
思わず苦笑して、俺はその髪を撫でながらぐっと抱き寄せる。
「お前が望むなら、いつだって構わないぞ?」
「う、うつけっ、わ、妾がいつ望んだっ……べ、別に、望んでなど……」
首筋や耳まで真っ赤になって俯くアルに、俺は思わず笑ってしまう。
「わ、笑うなっ! 笑うなと言うにっ!」
「お前のそう言うところ、可愛いぞ」
「―――っ!? な、な、なっ、何を言って………んんぅぅっ!?」
反論はキスで封じる。
唐突に唇を奪われて慌てて逃れようとするアルだったが、俺はしっかりと抱きしめて逃さない。
深く激しいそのキスに、やがてアルは身体を震わせて俺に身を任せていた。
唇を離すと二人の間を一瞬、つぅ…と光が繋ぐ。
「………す、少し、激しすぎるぞ……九郎…リルが起きてしまったら、どうするつもりだ……?」
息を荒げながら胸に縋って眠るリルの様子を気にするアル。
今のところはよく眠っているようだけど……確かに最中に起きられると拙いな……
それなら……
「……それなら…アクセス!」
リルの背中に手を添えて、魔導書『リル・アジフ』に干渉する。
アルの腕の中で、リルの身体がぴくんと跳ねた。
「汝、何を?」
「まあ見てなって……」
リルの内にある魔術に若干の干渉をして、一時的に眠りを深く設定。
これで、多少の事じゃ目が覚めない。
「何を……したのだ?」
「寝る子は育つ……ってね。リルにはちょっと深く眠って貰ったよ。これで多分明日の昼過ぎまでは眠り続ける」
「……リルに悪い影響など無いだろうな?」
「仮にも俺達の娘だぞ? んな事するかよ。どこの世界に自分の娘を傷つけるような父親が居るんだ?」
「最近多いから心配なのだ」
「…アルは、俺がそう言う事すると思うか?」
「……そう…だな……汝はそんな事をするような男ではない…すまぬ……」
「わかってくれりゃいいって。それよりも……ダンセイニ!」
そう言って俺が呼ぶと、部屋の隅からもそもそと何かが這い寄ってきた。
「てけり・り?」
「悪いけど今夜一晩、リルの子守り頼めるか?」
「てけり・り♪」
「んじゃ、頼むよ」
俺がそう言うと、ダンセイニはびろーんと広がってベッドのような形へと姿を変えた。
そこにリルを寝かせてやると、気持ちよさそうに微笑みを浮かべる。
「気持ちよさそうに眠っておるな……ふふっ、本当に可愛い……」
「ああ……さてと、じゃあダンセイニ、頼むな」
「てけり・り〜♪」
ダンセイニがそう言いつつ、リルと共に隣の部屋に行くのを見送って、俺はいきなりアルを抱きしめた。
「――っ!? く、九郎っ!?」
「これで、今夜はお前と二人きりだ……」
「あ、う、うむ……そ、そうだな……んぅっ!?」
前触れ無く奪う唇。
初めこそ驚いて抵抗したけど、すぐに俺に身を任せて逆に自分から求めるようになった。
「ん、んぅ……っ……九郎………んんっ……九郎……っ……」
何度も唇を重ねながら、俺はアルの着ているワイシャツのボタンを外していく。
数が少ないんだからパジャマ代わりに使うなと言っても、アルはすっかり俺のワイシャツが気に入ってしまったらしく、いつも寝る時はこの格好だ。
アルに言わせると、『裸ワイシャツは男のロマン!』らしいが……
「……はぁ………ん……っ………九郎……」
潤んだ瞳でじっと見つめてくるアルにもう一度キスすると、はだけた胸にその肢体に触れ、幾度も感じさせる。
重ね合った身体の温もりを感じながら、俺達は何度も、何度も……身体を重ね合った……
そして………夜が明ける頃……
「………はぁ……はぁ………く、九郎……わ、妾は……もう、限界……だ……」
「……さすがに俺も……アル……」
「な、なんだ……?」
「愛してるぞ……」
「………妾も……汝を誰よりも愛している……九郎……」
寄り添い合い、抱きしめ合って目を閉じる。
疲れ切っていた俺達は、そのまま睡魔に引かれるようにゆっくりと眠りに落ちていった……
それからどれくらいの時間が過ぎたのだろう……
ふと気付くと、太陽はすでに真上に来ていた。
「ふぁぁ……ん? ああ、もう昼か……我ながら、ちょっと寝過ぎたな……」
呟きながら、俺に縋り付くようにして眠っているアルの髪を撫でてやる。
「よく眠ってるな……昨日、ちょっと頑張りすぎたか」
「ん……んぅ……九郎………」
「寝言……? また俺の夢を見てくれてるって訳だ」
なんとなく照れくさくて頬を掻く。
リルが生まれてから後、なかなかアルの事を抱いてやる事が出来なかったから、欲求不満も溜まっていたんだろう。
昨日のアルは、今までないほどに俺の事を激しく求めた。
「寂しい思い、させちまったな……アル……」
そう言って抱き寄せようとしたその時、俺はアルの背後にもう一人の姿を見つけた。
「え……? リ、リル?」
思わず目を疑った。
確かに昼過ぎくらいまでしか効果は無かったと思うけど、まだリルが目覚めるには時間が早いはず……
いつの間にこっちに来たんだ……?
「ん……ふぁ……」
「アル、起きたのか?」
「………う……んぁ? ああ、九郎……ん、今、目が覚めた……ん? 何だ、この背中の違和感は……」
そう言って振り返ったアルの目が驚愕に見開かれる。
「リ、リル!?」
「俺もさっき驚いた」
「いつの間に……と、とりあえず、九郎。このままでは起きあがれんから離れさせてくれぬか?」
「ん、わかった。よっ……と」
俺がアルの背中から抱き上げてやると、リルは寝ぼけながらも今度は俺に抱きついてきた。
「フフ、本当に甘えん坊だな、リルは」
「まったくだ。それにしても……アル、その格好……」
見つめる俺の視線に、アルは自分の様子を見つめ……真っ赤になって身体を隠す。
それも仕方ないだろうな。なにしろ、下着一枚着けずにワイシャツ一枚きり。
まさに裸ワイシャツって奴だ。
しかも前は完全にはだけて、胸や下の方まで全部丸見えだしな。
「い、いやらしい目で見るでない!」
「その格好見て、平然としてる方が不自然だと思うが?」
「い、良いから向こうを向いておれ!」
そう言って慌てて下着を身に着けるアル。
ワイシャツのボタンも留めてようやく落ち着いたのか、俺の方に向き直った。
「汝も着替えた方が良いぞ。リルは妾が見ておく」
「ん、そうだな」
アルに勧められるまま、俺も辺りに脱ぎ捨てたままの服を拾って身に着ける。
「なあ、アル?」
「ん、なんだ、九郎?」
「お前って、子供何人くらい欲しいんだ?」
「な―――っ!? な、何を言い出すのだ、汝はっ!!」
「純粋な好奇心って奴だよ。それに……」
「そ、それに?」
「子供作るって理由なら、毎日でもやれそうだろ?」
「―――っ!?」
俺の言葉に、耳まで真っ赤に染まるアルの顔。
「ひ、一人出来ただけでも奇跡的なのだぞ……もう一人など……あり得ぬ……」
「無理かどうかはやってみなけりゃわからないだろ?」
「だ、だが……」
「リルも妹欲しいよな?」
「なっ!?」
慌てて腕の中を見るアルだったが、リルはいまだに眠ったまま。
ちょっとした俺の引っかけだったんだが……まんまと乗ってくれたな。
「く、九郎〜〜〜っ!!」
ジト目で睨んでくるアル。
だが、その表情もやがて緩んで微笑みへと変わった。
「まったく汝ときたら……だが、そんな汝を選んだのは妾だ……」
「後悔してるか?」
「いや……後悔など全くない。むしろ……汝という男を見初めた妾自身を誇らしく思う」
「へへ……そうか?」
「多少…いや、かなり、欲望の塊のような男ではあるがな」
そう言って笑うアルに、俺も頬を掻いて苦笑する。
「えへへ〜パパもママも大好きなのぉ……むにゃ………」
アルの腕の中、幸せそうな表情で寝言を呟くリルに思わず顔を見合わせて笑った俺達。
「いつまでも、何があっても俺の傍にいてくれ……アル……」
「離れたりするものか……妾は永遠に汝と共にある……愛しているぞ……九郎……」
呟いて、そっと唇を重ねた……
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