斬魔大聖デモンベイン SS 『アーカムシティーの守護者』
by Sin
「にゃぁぁ・・・ごろごろ・・」
「・・猫かよ・・」
再会を果たして3日。
覇道の姫さんに事件解決の報告を済ませて以来、また、開店休業状態の探偵事務所。
だけど俺とアルは、すっかり2人での生活の方を楽しんでいたから、あまり気にならないんだけどな。
姫さんから入った報酬は、結構な額だったから、とりあえず当面の生活には困る事はない。だから、
俺達はかなり気ままな生活を送っていた。
アルはあれ以来、俺から一切離れようとしない。
魔導書と魔術師という関係だけじゃなく俺達は本当の意味で、パートナーになっていた。
今も、俺の腕を枕に寝息を立てている所だ。
「うにゃ・・・九郎の・・うつけぇ・・・うつけ・・うつけぇ・・」
「寝言までそれかい!」
思わず突っ込む。
だけどすぐに口元が緩んじまう。
アルがいる。
俺の腕の中に・・
一度は、もう二度と会えないかも知れない・・そんな絶望を感じていた・・
それが今じゃこうして・・
まるで奇跡だ・・
俺がそう言ったら、アルの奴、『運命だ』なんて言いやがった。
初めて出会ったときのこと思い出して、俺が吹き出すと、アルも同じ事考えてたみたいで、一緒に笑っていた。
「・・・うぅん・・・ふぁ・・・」
腕の中でアルが身動ぐ。
「起きたのか?」
「・・・汝はぁ・・また妾の寝顔を・・・」
目を擦りながらそう言うと、アルは僅かに顔を赤らめて俯いた。
「いつも通り、可愛い寝顔してたぞ」
「・・うつけ・・っ」
アルは寝顔を見られるのを、結構恥ずかしがる。
だから俺はわざと、アルが寝るまで起きていて寝顔を見てやるんだ。
それに・・
「お前より先に寝ちまって、またお前が居なかったら・・たまんねぇからな・・」
そう言うと、アルは困ったような顔で苦笑すると、いきなり唇を重ねてきた。
「ん・・アル?」
「・・・・うつけっ・・妾とて・・もう汝と離れる事などできぬのはこの3日で解ったであろうが・・・あ、あまり、恥ずかしい
ことを言わすでない・・大うつけが・・」
「いや、だってさ。そう言うお前の顔見ると、面白いしな」
「なっ・・・く、九郎〜〜〜っ!!」
「ほら、そう言う顔」
「あ・・あうぅぅぅぅっ!!」
真っ赤になって恥ずかしがるアルの姿に、俺は満たされる想いで一杯だった。
もう二度と離れない。その誓いは、消して違えることはない。
俺達の生活は、まだ始まったばかりなのだから・・
翌日、俺達は揃って教会へと向かった。
ライカさんに、アルのこと紹介しておかないといけないからな。
「よっ、ライカさん」
俺の声に、教会前で花に水をやっていたライカさんが振り返る。
「あら、九郎ちゃん。またたかりに来たの?」
「・・・俺だって、たまには違う用件で来るって・・」
「ホントに、たま〜〜〜〜〜〜〜〜に、よね」
「いや、強調されても・・」
「じーーーっ」
「・・はい、たまにです、すっごく・・」
「よろしい。ところで、どうしたの? 食事をたかりに来る以外で、九郎ちゃんがここに来るなんて・・はっ、
まさか・・何かとんでもないことをして、逃げ場を失い、ほとぼりが冷めるまでここに隠れさせて欲しいなんて・・」
「おい・・」
「それでそれでっ、黒服の怖い人達が九郎ちゃんを出せ〜って迫ってきて・・庇った私は拐かされて男達の
オモチャ・・嫌〜〜っ、まわされるのは嫌〜〜っ!」
相変わらずと言うかなんと言うか・・
たまにこの人、大丈夫なのかって心配になるぞ・・人として・・
「相変わらずだの、この女は・・」
「まあね・・変わるようなこともないしさ・・」
「そうだな・・」
そう言ってアルが苦笑した時、ようやくライカさんもその存在に気付いたようだ。
「あら? 九郎ちゃん、そちらの可愛らしいお嬢さんは?」
「可愛らしいかどうかは別として、お嬢さんではないぞ、こいつは」
俺がそう言うと、視線の隅に膨れっ面のアルの姿が見えたが、とりあえず置いておく。
「こいつは俺の・・」
「所有物だ」
一瞬にして凍るその場の空気。
「あ・・・あうあう・・・あっ・・ああ・・っ! 九郎ちゃん!!」
「お前はどうしてそう言う誤解を招くようなことを・・」
「真実だ」
慌てる俺に、冷静に答えるアル。
その様子にライカさんは何を思ったのか、ずざざざっ・・と後退った。
「あ、ああああああなた、も、もしかしてぇぇぇっ!?」
「ちょっと待った! 違うっ! ライカさんが想像しているのはきっと間違って・・って・・・なんか、前にも覚えが
あるぞ・・このシチュエーション・・」
「九郎、ろりこん〜!」
「ぺどー」
「りょうきさつじんしゃ〜♪」
子供達にまで指さされる始末・・
「って、何お前まで同じ事二度もやってんだよっ! 大体そもそもお前が・・」
「妾に手を出した汝の運命だ。諦めろ」
「人聞きの悪い言い方するなっ!! そ、そりゃあ・・確かにお前のこと・・だけどそれは・・」
口籠もる俺に、ライカさんは子供達を抱き寄せると、慌てて遠ざかろうとする。
「だ、駄目よ、みんな! 今の九郎ちゃんは危険なの! 変態なの! 異常者なの!! そんな幼気な少女を
拉致監禁して瞳から生気を失う程に散々嬲った上、それならまだしも両手両足切り落としてだるまプレイだと
(聞くに堪えない内容の為、検閲)・・だとかで、九郎さんの脳内はエロエロのグログロなのよぉぉぉっ!!」
「・・日頃、本気で俺をそんな目で見ていたのか、アンタ・・」
聞かされるのは2度目だが・・流石に正気を疑うぞ・・ライカさん・・
子供達も一緒になって囃し立てるし・・
「ろりこん〜♪」
「ろり〜ろり〜♪」
「りょうきさつじんしゃ〜♪」
子供達と一緒に囃し立てるアル。
「おのれはっ、更にまだ言うかっ!!」
「事実無根ではあるまい? 第一、妾が汝の物であることに間違いはないのだからな」
「それとお前がさっきから言ってることと、どう関係する!?」
「ふむ・・・・・流れだ」
「な、流れって・・それを作ってんのもお前だろうが!」
睨み付けるように言った俺に、アルはたった一言・・
「運命だ」
そう言って素知らぬふりをする。
「い、言い切りやがった。それも一言で・・・」
「汝が真性のロリコンであることは、誰よりもこの妾が一番よく知っておる。この身体で、汝の全てを受けとめたの
だからな・・・」
「・・・・それは・・確かにそうだが・・」
その俺達の会話に、ライカさんは子供達を抱き寄せて後退る。
「否定しない!? ・・・や、やっぱり、九郎ちゃん・・あなた・・」
顔を引きつらせて少しでも俺から離れようとするライカさん。
こうなったら、この場ではっきりさせてやる。
「ちょっと待った。ロリコンであることはこの際認めるとして・・俺は、そいつらになんて興味ねえよ。俺には・・」
スッとアルの背後に近寄ると、俺はいきなり抱き寄せた。
「にゃっ!?」
「こいつがいるからな」
そう言うと同時にアルの唇を奪って見せる。
「んぅっ! な、汝はぁっ!! いきなりこんな所で・・」
真っ赤になったアルの身体をしっかりと抱きしめると、俺はライカさんを見た。
突然の事に言葉を失っているらしく、パクパク動く口だけが魚みたいで笑える。
「ロリコンでもなんでももういいや。とにかく、こいつは俺の絶対無二のパートナーだ。最高のな」
そんな俺の言葉に、アルはしばらく惚けていたが、やがて微笑みを浮かべると、ギュッと抱きついてきた。
「妾の全ては汝の物ぞ・・九郎・・」
そう言うと、アルは俺に身を委ねて、目を閉じる。
「九郎ちゃんが・・九郎ちゃんが・・とうとう幼女趣味に・・っ」
「・・・幼女、幼女って言うけどさ・・見てくれはこうだけど、はっきり言って俺より何百倍も年上なんだがな・・」
俺のつぶやきもライカさんの耳には届かない。
「妾の姿だけで判断するとは・・やはり愚かしいものよな・・」
「確信犯のくせに・・」
「ん? なにか言ったか、九郎?」
「べつに。それはともかく・・ライカさん」
俺が呼びかけると、ようやくライカさんは気がついたのか、跳ね上がって驚いた。
「な、な、な、な、なな、なに、かしら? く、九郎・・ちゃん?」
うわ・・・思いっきり引いてるし・・
「とりあえず、わけのわからん誤解だけは解いておく。アル、前に姫さんに見せた奴、またやってくれ」
「致し方あるまい・・ならば見がよい、人間よ! 妾こそ全ての『死霊秘法』の母たる存在、『アル・アジフ』!
アブドゥル・アルハザードによって記された世界最強の魔導書なり!」
その言葉と共にアルの身体が無数のページとなって辺りに舞い上がる。
「妾ほどの魔導書ともなれば、命を持ち、魂の器たる肉体を持つものなのだ!」
呆然とその様子を見上げるライカさんや子供達の目の前で、再び戻ったページがアルの身体を構成していく。
やがて完全な姿となったアルは、再び俺の側に寄り添った。
「・・と、まあ・・こういう事なんだ」
頬を掻いて言う俺に、呆然とその様子を見つめていたライカさんは、「うわぁ・・」と溜息を漏らすばかりで、
まともに返事がない。
「あ、あのぉ・・ライカ・・さん?」
「・・・ま、まあ、アルちゃんが、魔導書・・だっけ? そういうのだって事は解ったけど・・」
「けど?」
「・・・どう見ても、アルちゃんって10代前半よね?」
「まあ、見た目は確かに」
「・・・九郎ちゃんの・・ロリコン・・・」
伏せ目がちに言ったライカさんの言葉が胸に突き刺さって抉っていく。
「ぐはっ・・ま、まだ言うか・・?」
なんとなく疲れ果てて座り込んだ俺に、アルが寄り添ってくる。
「諦めろ、運命だ」
「らしいな・・もう、どうだっていいか・・」
そう言いながらアルを抱き寄せると、ライカさんに見せつけるようにキスをした。
「んんっ・・こら・・九郎・・あまり激しくするな・・あ・・んんっ・・・」
「こうなったら、思いっきり見せつけてやろうぜ・・アル・・」
「う、うつけ・・っ・・・なんで汝はそんな恥ずかしいことを・・んあっ!?」
もう、吹っ切れた。
ロリコンと呼びたければ呼んだらいい。
どうせ言われるなら、目の前で堂々といちゃついてやるっ!
「あ、えーっとぉ・・・あのぉ、九郎ちゃ〜ん? えっと、一応ここは神様の前なんですけどぉ・・」
額にでっかい汗を浮かべてライカさんが言ってくるが、俺は完璧に無視。
「ちょっ、だ、駄目だ、九郎! これ以上は・・こんな所では妾は・・妾は・・っ!」
「惚れた相手が目の前にいるなら、それ以外は関係ない・・よな?」
「う・・・っ・・そ、そんな事・・答えられるわけ無いではないか・・」
恥ずかしそうに瞳を伏せるアル。
「く、九郎ちゃんっ! こ、子供達が見ている目の前で、そ、そんな背徳的な事っ!」
「子供相手に、とんでもないこと言ってたのはどこの誰!?」
間髪を入れずに言い返してやると、ライカさんは「あ、あうぅ・・」と、思わず言葉に詰まった。
その様子に俺が思わず笑おうとしたその時だった。
「待て、九郎。何か聞こえぬか?」
アルの言葉に俺が耳を澄ますと、遠くから地響きが聞こえてくる。
「・・なんだ、この地響きは・・」
「嫌な予感がする。行くぞ、九郎!」
「ああ! 久々に、魔術師として暴れてやる!」
そう言うと、俺はアルを抱き寄せて唇を交わす。
その瞬間、俺達は光に包まれた。
「く、九郎ちゃん!?」
慌てたライカさんの声。
やがて光が晴れる・・
閉じていた目を開けると、俺の姿は魔術師へと変わっていた。
「うむ、久々だが・・妾の中に汝の力が流れてくる・・あの頃は解らなかったが・・心地よいものだな・・汝と1つに
なるというのは・・」
「そうだな。さてと・・ライカさん達はもしもの時の為に、避難しててくれ」
「九郎ちゃんは!?」
「俺は、この地響きの元を、断ちに行く。行くぞ、アル!」
「我等の力、存分に見せてやろうぞ!」
アルの言葉と共に、俺はマギウスウイングを羽ばたかせて大空に舞い上がる。
「・・・九郎・・ちゃん・・」
心配げなライカさんのつぶやきは、俺の耳に届くことはなかった。
「どうやらあそこかららしいな・・」
爆炎を上げるビル。
地上からの銃撃や、ヘリによる爆撃なども行われているようだが、効果は無さそうだ。
何しろ相手は・・
「く、九郎・・? な、なぜ、あの者が居るのだ?」
「何故って言われてもなぁ・・俺だって驚いたんだけど・・どうやら、アイツってブラック・ロッジとは関係無しに、
この街にとって傍迷惑な奴だったみたいだな」
「・・なんとしぶとい・・」
感心と呆れの狭間で、アルは呟く。
その時・・
鳴り響くギターの音。そして聞こえてくる・・馬鹿笑い・・
「ぎぃやぁぁっはぁっはっはぁぁぁぁっ! 壊せ! 壊すのだ! 『スーパーウェスト29号〜世界は我が手の
中に〜』は、絶対無敵、史上最強である!!」
「壊すロボ!」
すっかりお馴染みになったあの声に、俺も思わず溜息をつく。
「懲りない奴・・」
「んんんんん〜〜っ!? な、なんであるか、許奴は・・?」
「なんだロボ?」
俺達を見つけたウェストの野郎が呟く声がはっきりと聞こえる。
「・・ちゃっちゃと片づけるか・・バルザイの偃月刀!」
偃月刀を召還して、破壊ロボに突っ込んでいく。
その間も、ウェスト達の会話ははっきり聞こえていた。
「なんと・・魔術師であるか・・?」
「関係ないロボ。ぺちゃんと踏み潰してやるロボ」
「うむ、さすがは我輩の作った愛しのエルザ。これだけの物を作ってしまうとは、やはり我が輩は天さ・・
ぶぎゃっ!?」
いきなり下からの必殺ブローに、ウェストの身体がふわりと舞う。
そのままコクピットの天井で跳ね返り、落ちたようだが・・
「うるさいロボ」
「な、何をするであるか、エルザ?」
「・・無駄に丈夫だロボ・・」
「何を考えているのであるか・・?」
「エルザの考えなんて、博士が、ちんけな頭で考えてもわかるわけない。無駄だロボ」
「ち、ちんけ・・この我輩の頭脳が、ちんけ・・しかも吾輩の作ったエルザに言われるとは・・うぎゃあああああ
ああああああっ!!」
ウェストの絶叫。
その瞬間、俺は破壊マシンの4本の足を偃月刀で切り裂いていた。
「さてと・・片づいたか・・」
「まだ・・まだであるっ!」
「・・・確かに、無駄にしぶとい・・」
「うむ・・許奴、本当に人間か? ゴキブリの精であるとか・・」
「こんな精霊、いらん・・」
「そうだな・・とりあえず、九郎。やってしまえ」
「ああ。それじゃあ・・クトゥグァ! イタクァ!」
アルの言葉に、俺は二丁の拳銃を召還する。
「一斉射撃!」
自動式拳銃(クトゥグァ)、そして回転式拳銃(イタクァ)が次々と爆音を響かせる。 一斉に破壊マシンに
襲いかかった弾丸は、その全身を貫き・・
そして・・爆発した。
「良くやったぞ、九郎」
「・・・やっぱり、普通はこの程度なんだよな・・」
「どうした?」
「いや、俺さ、アンチクロスだとかマスターテリオンだとか、化けもんとばかり戦ってきたからさ、俺って強いんだか
弱いんだか解らなかったんだが・・やっぱりこうしてみると、俺って結構強いみたいだな」
そう言いつつ、俺は魔術師スタイルから、普段着に戻る。
そして、周りを舞っていた魔術書のページが1つに集まり、またアルの姿に戻った。
「汝は強い。妾の知るどんな魔術師よりも・・そして・・妾が最も愛する男だ・・」
「よせよ、照れる」
「・・珍しく妾が誉めてやっているのだ・・素直に聞け・・うつけが・・」
照れくさげに頬を赤らめて呟くアル。
その髪にそっと指を絡ませてやると、くすぐったそうに身を捩った。
「・・・う・・うぉ・・うぉのれぇぇぇぇぃぃぃぃぃっ!!」
唐突に瓦礫の山から起きあがってくるウェスト。
その服はボロボロだが、何故か愛用のギターケースだけは無傷だ。(なんでだ?)
「・・・まだ生きてるよ・・」
「本当に・・しぶとい・・」
「しぶといロボ」
「って、エルザ!?」
「・・・流石にちょっと壊れたロボ。博士、すぐに直すロボ。エルザがこのまま見境のないオオカミの手に落ちて
オモチャにされるまでほっておくつもりかロボ?」
「うぬぅぅっ! だ、大十字九郎であったか!? お、覚えておくがいいである! 吾輩は、決して負けては
いないのであるっ!!」
「・・・ったく・・わ〜ったよ・・じゃあ、俺もはっきり言ってやる!」
「な、なんであるか?」
「アル・・もう一度、魔術師に」
「わかっている。汝の気持ちくらいはな」
その言葉と共に、再び俺達は魔術師スタイルへ。
「ドクター・ウェスト! そしてエルザ! よく覚えておけ!
俺は最強の魔術師、『マスターネクロノミコン』!
アーカムシティーの平和を脅かす奴は、この俺がブッ倒す!!」
高らかに俺は宣言する。
すでに真なる魔は存在せず、そして魔を断つ剣もまた、存在しない。
だが、悪の痛みに泣く者がある限り、俺は・・いや、俺達はこの街を・・
このアーカムシティーを守り抜いてみせる!
それが、俺の誓いだ!
お前と一緒に作った平和、見ていろよ・・デモンベイン!
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